最側近の離反でプーチンの終末が近づいた 地下壕を転々とし、あだ名は“塹壕じいさん”

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20万人に近づく死傷者

 それでもロシアは、ルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、へルソンなど東部、南部の州の制圧には成功したものの、

「ウクライナ軍の本格的な反抗に遭い、9月には一部を占領したハルキウ州を、11月には州都を含むへルソン州の西部をそれぞれ奪還されています。その後は東部を中心に一進一退の攻防戦が続いていますが、ロシア軍は1月末から2月頭に向けて大規模攻勢をかけ、支配地域を局所的に広げて押し戻す動きが出ている。ウクライナ軍の抵抗も激しく、戦闘の烈度は上がる一方です」

 この間のロシア軍の損耗は大きかった。

「これまでに30万人超の兵を投入し、20万人に近づく死傷者が出たとの見方を米軍は示しています。また、イギリス国防省は、ここまで4万~6万人の戦死者が出ていると分析しています」

 1979年からソ連はアフガニスタンに侵攻し、以後9年間で1万5千人の戦死者を出したといわれる。今般、わずか1年でその倍以上から4倍の死者を出しているというのである。

二つの火種

 そうした状況だから、政権内部で深刻な亀裂が生じているのは当然といえる。

「現在、プーチン政権には、二つの火種があるといわれています」

 と述べるのは、元読売新聞国際部長でモスクワ支局長も務めた、ジャーナリストの古本朗氏だ。

「一つ目は軍内部です。今年1月にウクライナ侵攻軍のセルゲイ・スロビキン将軍が総司令官を解任され、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長が任命されました。これを巡っては、軍によるミニ・クーデターではないか、との見方も出ているのです」

 今回のウクライナ侵攻におけるロシア軍には二つの勢力がある。一つは正規軍、もう一つは非公式に投入されてきた民間軍事会社「ワグネル」などの傭兵部隊だ。そして解任されたスロビキンは「ワグネル」創設者、エフゲニー・プリゴジンの盟友と目されている。

「戦況が悪化するに連れ、比較的高度な戦闘能力を持つ『ワグネル』の力が増してきた。プリゴジンはその功をアピールし、スロビキンを総司令官に推しましたが、それに不満と危機感を抱いたゲラシモフら軍部がプーチンに直訴し、交代を迫ったとの見方が出ているのです」

 正規兵vs.傭兵の主導権争いが激化しているというわけなのである。

 時事通信モスクワ支局長を務めた、拓殖大学の名越健郎・特任教授も言う。

「政権の内情に通じているため、専門家も注目する『SVR将軍』なるSNSアカウントがある。その投稿によれば、プリゴジンらは常々ロシアの正規兵を敵対視し、酷評してきた。かつてゲラシモフが将兵にヒゲを短くすることを要求した際は、“われわれは戦闘で忙し過ぎて、正規軍のようにヒゲを剃る時間がない”と反発したほど。プーチンは、そんなプリゴジン派が据えた総司令官を切り、正規軍のトップを据えたわけですから……」

「ワグネル」側の反発は避けられないというのだ。

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