【ブラッシュアップライフ】ひねりの利いたバカリズム脚本 過去の3作品から進化を読み解く
安藤サクラ主演の連続ドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)が好調だ。終わってしまった人生を何度もやり直す……“ひねり”の利いた脚本は、お笑いタレントのバカリズム(47)によるオリジナルだ。なぜこんな作品を生み出せたのか、メディア文化評論家の碓井広義氏が彼の過去の作品から読み解く。
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人生は一度きりだが、もしも生まれ変われるとしたら、どうだろう。しかも自分は「未来」を知っているのだ。踏まずにすんだ地雷があったはずだし、岐路での選択も違ってくるのではないか。『ブラッシュアップライフ』は、そんな「やり直し人生」のドラマである。
基本設定が秀逸な『ブラッシュアップライフ』
まず、基本設定が秀逸だ。地元の市役所に勤めていた近藤麻美(安藤)は、突然の交通事故で死亡してしまう。だが、気がつくと奇妙な空間にいて、案内人の男(バカリズム)から「来世ではオオアリクイ」だと告げられる。
それを拒否して「今世をやり直す」ことを選んだ麻美は、誕生から社会人へと至る「2周目の人生」を歩み始める。ただし、以前の人生よりも何かしら「徳を積む」ことが必要だった。麻美は保育園で園児の父親と保育士との不倫を阻止したり、売れないミュージシャンという未来が待ち受ける同級生(染谷将太)を救おうとしたりする。
人生に修正を施そうと周囲に悟られることなく善行に励む様子が何ともおかしく、安藤サクラという俳優のうまさを再認識する。また、幼なじみの夏希(夏帆)や美穂(木南晴夏)とのガールズトークも、ユーモラスでリアルな言葉と軽快なテンポが心地いい。
そんな麻美のやり直し人生も、2月26日放送の第8話で5周目に突入した。市役所職員、薬剤師、テレビプロデューサー、そして医学研究者へ。職業も変化していく飽きさせない展開は、バカリズムによるオリジナル脚本の成果だ。
実はこの快作、昨日今日のタイミングで出来上がったわけではない。これまでの蓄積があってのものだ。バカリズム脚本の進化と深化をたどってみる。
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