オリックス「T-岡田」が捲土重来を期す…日本一連覇をめざすチームには“必要不可欠”

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球団史に残る、起死回生の逆転3ラン

「もう、18年ですよ。人生半分、プロ野球です」

 ホームラン王に輝いたのは、5年目の2010年。以来、打撃タイトルには手が届いていない。いつの間にか、吉田正尚に「主砲」の座を奪われていたのも確かだ。

 それでも、この男と本塁打は、やはり切っても切れない関係にある。球団の歴史を振り返る名シーンの映像には、必ずといっていいほど挿入されている2014年のクライマックスシリーズでの1本は、日本ハムとの第2戦。その8回に放った起死回生となる逆転の3ランは、その瞬間、満員のスタンドが総立ちになった。

 その劇的なシーンは、時がたっても色あせない。つい、そんな懐かしい話を出してしまった。

「それだけ長いことやっていますから、1本や2本、そういう劇的なホームランもありますよ」

 数々のドラマを生んできたベテランだが、昨季の日本シリーズでは、その中心に座ることはできなかった。1戦目に代打でタイムリーを放ち、2戦目ではスタメンに座ったが、3戦目以降はベンチ外だった。

不本意な成績に終わった昨季、今年こそ…

 ビジターの神宮球場では「練習した後は、宿舎に戻っていたんです」。あの熱き戦いの場に、いられなかったのだ。
 
 日本一がかかった第7戦は、神宮球場横のクラブハウスで待機し、歓喜の瞬間はブルペン後方にある関係者入口から走って来て、胴上げに参加したのだという。

「それは、しょうがないことですから……」

 その輪の中に、入り切れなかった悔しさがある。

 昨季は、わずか36試合出場、本塁打も1本にとどまり、打率は1割4分9厘。調子が戻らないまま、不本意な一年を終えることになった。

 今年こそ、もう一度。

 まさしく捲土重来。それは自分のためだけでなく、2年連続日本一、リーグ3連覇を目指すチームにとって、必要不可欠な要素でもある。

「頑張りますから。また球場にも来て下さいよ」
 
 コロナ禍で、制限のかかっていた対面取材も、徐々に容認されてきた。リモートではなく直接顔を見て、その表情や声色で、心の“張り”を感じることができる。

 ベテランは、やる気だ。2月の宮崎で、その意気込みを感じることができた。

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」(光文社新書)。

デイリー新潮編集部

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