「PGAツアー」「リブゴルフ」で複雑すぎる新制度がスタート “リブに出たい”日本人選手の落とし穴とは

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「人気選手を出場させるためでは」との批判

 さて、PGAツアーが今季から開始している新施策は、さらに複雑きわまりない。従来のレギュラー大会を賞金総額2000万ドル級の「格上げ大会」にグレードアップするなどして、メジャー4大会を含めた年間20試合への出場を「トッププレーヤー」に義務付けるという大改革を敢行中だ。

 しかし、この時点ですでに「わかりにくい」と感じるのではないだろうか。どの試合が格上げされ、どの試合が格上げされなかったのかも「よくわからない」状態。格上げされなかった大会の行く末に至っては、「まったくわからない」。

 そんな中、42年間もタイトル・スポンサーを務めてきた自動車メーカーの本田技研工業は、今年限りでスポンサーから降板。2月23日から開催されたホンダ・クラシックが長い歴史に自ら終止符を打った。これは複雑な大改革がもたらした副作用の犠牲になった典型例だが、その矢先、PGAツアーは2024年からの「格上げ大会」のさらなる改革を決め、ゴルフ界をざわつかせている。

 新たな改革は一層複雑なシステムとなる見込みだ。メジャー4大会やプレーヤーズ選手権などを除いた一部の「格上げ大会」は、来年からは出場人数を70~78名ほどに絞り、予選落ちのない4日間72ホールの形式に変更される。

 そして、出場できる70名強の選手は、前年のプレーオフ・シリーズ第2戦となるBMW選手権に出場した50名が主体となり、フェデックスカップ・ランキングや世界ランキングに基づいて10数名が追加される予定だ。

 目新しいのは、「格上げ大会」ではない通常の大会で優勝すれば、すぐさま次なる「格上げ大会」への出場が可能となるという点だ。逆に首を傾げさせられるのは、人数を絞ってスター選手を集結させるのが「格上げ大会」であるはずなのに、スポンサー推薦の枠は残されるという点だ。

 米メディアや一部の選手からは「タイガー・ウッズや不調でも人気だけは衰えない選手を出場させるための枠では?」と指摘されており、今後、物議を醸すことは必至であろう。

 ともあれ、できるだけわかりやすくシンプルに説明したつもりだが、それでも「何がなんだかよくわからない」と感じた方々、それは「当然」で「ごもっとも」だと思う。

 プロスポーツは、ファンに親しまれ、愛されてこそ。そして、選手たちはモチベーションを抱き、腕を磨いてこそ、いいパフォーマンスが導き出される。複雑怪奇な新制度合戦は、徐々に本来の軌道から外れつつあるのではないかと思えてならない。せっかくの努力が本末転倒とならないことを祈るばかりだ。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やテレビ・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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