上海のスーパーで娘を連れ去られた日本人 直ぐに発見されたものの我が子と全く分からなかったワケ【元公安警察官の証言】
日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。一昨年『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、中国で起きた日本人の子どもの誘拐未遂事件について聞いた。
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中国の公安省は昨年3月から7月末の間に、906件の誘拐事件を摘発し、1069人の容疑者を逮捕。長年行方がわからなかった子どもや女性1198人を発見した。逮捕者の中には、26年の間に11件の子どもの誘拐事件に関与していたり、23年前に女性2人と4人の幼児を誘拐した男もいたという。
日本人の子どもが狙われた
「中国の東北地方の黒竜江省、吉林省、遼寧省などの農村部では、農業や工場などに従事する労働力が慢性的に不足していて、今でも人身売買が行われています」
と語るのは、勝丸氏。
「そのために子どもや若い女性が誘拐されて、農村部に売られています。男の子は農場や工場で、女性は風俗店で働かされるケースもあります。公安省が定期的に取り締まりを行っているため、件数は一時的に減りますが、またすぐに増えてきます」
公安省が最も多く摘発を行ったのは10年ほど前だ。朝日新聞(2012年2月23日付)記事には、こんな記述がある。
《中国は「誘拐・人身売買大国」だ。誘拐され、労働力や性の相手として売り飛ばされた子どもや女性は、過去3年間に警察に保護された数だけでも5万3千人余りに上る。政府は取り締まりを強化しているが、ある日突然家族と引き離される悲劇は後を絶たない。》
「誘拐されるのは、中国人だけではありません。外国人の子どもも狙われます」
その頃、日本人の母子はこんな危険な目に遭ったという。
「広東省の広州市で、日本人の女性が小学生の息子と街を歩いていました。当時、子どもをダブルのトレンチコートの中に隠して連れ去る誘拐犯が多く、母親はそのことを知っていました」
女性が先に歩き、男の子は後からついてきていたが、彼女は後ろを振り返った瞬間、「あっ」と声をあげた。
「そこには噂されていたトレンチコートを着た男がいたそうです。びっくりして息子を探したところ、近くにある木のそばにいたので、あわてて『こっちに来なさい』と言ったといいます。親子は、男にしばらく後をつけられたそうですが、なんとか難を逃れました」
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