冬ドラの10代視聴率1位はなぜ「大病院占拠」なのか? テレビ離れでも10代向け番組が増える裏事情

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「大病院占拠」がリアリティよりも重視するもの

 1位「大病院占拠」はドラマファンの一部から不評を買っているようだが、それも不思議ではない。ドラマの常識をことごとく無視しているのだから。

 主人公の武蔵三郎警部補(櫻井翔・41)は超人的な活躍を見せる。青鬼こと大和耕一(菊池風磨・27)ら敵の武装集団は機関銃を乱射する。リアリティは二の次だ。

 もっとも、この番組の制作者たちは最初からリアリティを重視していないだろうし、視聴者側も求めていないはず。観る側はスリリングなバトルゲームを観ている感覚だろう。CGやテロップを多用した映像処理、電子音のBGMはさながらゲーム。進行がモタモタしていないところも10代を引き付けているはずだ。

 3位の「夕暮れに、手をつなぐ」も若い世代以外には分かりにくい。九州の片田舎から単身上京した主人公の浅葱空豆(広瀬すず・24)が、瞬く間にお洒落な住まいとやさしい友人たち、華麗な職場を得る。一言で言ったら「あり得ない」。

 空豆は現在、デザイナーを目指している。これまた現実には茨の道であるはず。ところが実は母親が人気ファッションデザイナーで、父親が天才画家だから、その血を受け継ぎ、成功に向かって大驀進中だ。まるで昭和期の少女漫画である。

 だから夢が持てる10代に好まれるのだろう。奨学金の返済に困っている20代やパワハラに悩まされる30代が登場するドラマなど観たくないに違いない。

 広瀬と相手役の海野音を演じている永瀬廉(24)が10代の間で人気者であるのも大きい。音はコンポーザー(作曲家)なので、ファッションブランドの現場とレコード会社内が頻繁に登場する。まるでバブル期のトレンディドラマだが、キラキラしていて10代には魅力的だろう。

“おっさんドラマ枠”の傾向が強かった日曜劇場も変化?

 4位の「相棒21」は底力を見せている。5位「Get Ready!」は狙いが半分、成功しているようだ。

「ノーサイド・ゲーム」(2019年)や「日本沈没-希望のひと-」(2021年)などによって、おっさんドラマ枠の臭いが強くなっていた日曜劇場は、視聴者年齢を下にも広げようとしているのが分かる。

 だから前作「アトムの童」ではゲーム界を舞台にした。「Get Ready!」は医療物であるものの、考証に拘らず、痛快さを前面に出した。こちらも映像処理の一部がゲーム的だ。ただし、10代より上の個人視聴率をもっと欲しいところだろう。

「ブラッシュアップライフ」は10代より20~40代の個人視聴率が高い。2月第3週(13~19日)はコア視聴率(13~49歳)が4.1%でトップだった。主人公の近藤麻美(安藤サクラ・37)がこれまでに自分の生まれた平成元(1989)年に5度戻り、平成史を振り返る内容にもなっているからではないか。

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