脂の乗った“寒ブリ”を真夏にも 進化系「冷凍寿司」、半年経っても“握りたて”の美味しさを保つ最新技術とは
ドリップなしで、うま味を温存
これを防ぐことができるのが、冷凍機器を製造する「テクニカン」(横浜市)が開発した「凍眠」。気体ではなく、凝固点が低いアルコールを使った水溶液で、食材を短時間で凍結させる。液体は気体に比べて熱伝導の効率が良いため、すばやく凍結でき、食材の質を保てるのだという。
東信水産は、立体真空パックの製造機でネタとシャリを別々にパックしてから、「凍眠」で急速凍結させる。ともに15分ほどで凍結状態になり、その後、別の冷凍庫で保存している。同社によると「マイナス60度で冷凍保存すれば、180日ほどネタもシャリも質を落とさず、解凍して食べられる」(広報課)という。購入後は自宅の冷凍庫で3~4日は保存でき、おいしく食べられるというから驚きだ。
東信水産が昨年から通信販売している冷凍寿司セットは、寿司ネタとシャリが別々にパックされており、解凍時はそれぞれパックのまま魚介のネタは氷水に20分ほど浸し、シャリの方は電子レンジで1分半ほど加熱、または10分湯煎するだけ。
商品にはこうした解凍方法や、握り方などの「取説」が付いているからありがたい。解凍したらパックのフィルムをはがし、シャリの上にネタを載せて軽く指で握って、形を整えたら「一丁上がり」となる。
“本マグロ”をはじめネタも豪華
ネタは長崎県産本マグロの中トロ2貫と、赤身1貫、ノルウェーサーモンはブランドの「オーロラサーモン」1貫、加えて愛媛県産のマダイに、静岡県産のヒラメ、このほかソデイカ、アカエビに、青魚の長崎県産マアジの計9貫と、なかなか豪華なラインナップ。値段は1人前、税込み2200円ほどなので、本格的な握り寿司と考えれば、かなりお得感がある。
本マグロなどはもちろんだが、実際に食べてみると、アジまでネタはプリッとうま味たっぷり。シャリはしっとりと、寿司通もうなずくような仕上がりで、とても冷凍したとは思えない「上寿司」レベル。完成までにひと手間掛けることで、名店の寿司職人の技をちょっぴり体験したような気持ちにもなる。
東信水産は、寿司セットのほか、海鮮丼や寿司ネタにもできる刺し身、サケやサバの焼き魚も「凍眠」で急速凍結して、昨年から通販で提供。昨年末には、寿司セットの注文が120パックほど入り、次第に売れ行きも伸びてきた。
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