脂の乗った“寒ブリ”を真夏にも 進化系「冷凍寿司」、半年経っても“握りたて”の美味しさを保つ最新技術とは
日本人だけでなく、インバウンド(訪日客)からも大人気な和食の代表格・寿司。最近、回転寿司での若者の迷惑行為で、足が遠のいた人がいる半面、「焼き肉か、寿司か」と迷うほど、時折、無性に食べたくなる料理だろう。カウンターで食べる高級な寿司から、宅配を含めたチェーン店のリーズナブルな寿司までさまざまだが、これまでの寿司の食べ方、そして常識を覆す、新たな「冷凍握り寿司」が登場し、注目を集めている。【川本大吾/時事通信社水産部長】
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【写真】魚のプロも太鼓判を押す「冷凍寿司」は、どのようにして生み出されるのか
生もの満載の寿司は、基本的に握りたてを食べるのが当たり前。宅配・テイクアウトにしても、かつての漫画であったような、お父さんがほろ酔いの後、土産に持って帰る「おみや」の寿司にしても、その日のうちに食べるのが常識だった。すぐに食べられないからと冷蔵庫に入れてしまえば、期待が大きく裏切られ、ネタはもちろん、酢飯のシャリも水分を失ってぼそぼそに。何とも残念な味わいに変わってしまう。
ところが、「一丁上がり」と寿司が出来上がってから、マイナス60度の冷凍庫でおよそ半年。購入してすぐ自宅の冷凍庫に入れれば、3日ほど経ってもおいしく食べられるというのが、鮮魚専門店・東信水産(東京都杉並区)が開発した、冷凍握り寿司セットである。
なぜ、業務用の冷凍庫で何ヵ月も、家庭の冷凍庫で何日も保存できて、おいしく食べられるのか――。その秘密は、食材の凍結法にある。通常の窒素凍結では、寿司ネタやシャリを冷凍させるのに時間が掛かって食材の組織が膨張。細胞が破壊されて、解凍時に「ドリップ」と呼ばれるタンパク質やうま味を含んだ水分が、流れ出してしまうのだ。
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