握手会の衣装は自前、踊りすぎで骨折寸前…昇格後に即卒業した五十嵐早香の「アイドルより自立したかった」
自立したくて…しかし突然の休養
――給料は少ない、でもお金はかかる。五十嵐さんは親から毎月5万円のお小遣いをもらっていたそうですが、それが心理的な負担になったそうですね。
思春期のときにお父さんから「俺たちがいないとお前は生まれてきてもないし、何もできてもないんだぞ」と言われたことがずっと心に残ってたんです。彼らが家賃を払った場所で寝泊まりして、彼らの稼いだお金でご飯を食べるとなると、自分から生まれたものは、彼らのおかげなんだと思ってしまって…。ひねくれてたんでしょうね。
だから昔から自立したいとずっと思っていました。フィリピンでアイドル活動を続けないで、SKEに入ってアイドルを職業にしようと思ったのも、その思いからです。自立したくて事務所のルールを破って、隠れてアルバイトもしてました。
――2020年末から2021年の5月までの半年間、SKEの活動を休養しましたね。
突然、体調不良に襲われたんです。最初は痙攣、手の震えでした。夜、寝ようとしてもSKEでの立ち位置の表が出てきて、なかなか寝付けない。ご飯も食べれなくなっちゃってたんですけど、無視していたら、いきなり精神的にやられてしまって。
――その体調不良の原因も自立できないことが大きかった?
そうですね。2020年末に休養に入って、2021年1月にはここにはいられないと家出しようとしてました。ツイッターでアカウントを作って、名古屋に住んでいたので東京か大阪に家出したいとツイートしたら知らない男の人からすごい数のDMが届いたんです。でもそれを見たら不安になっちゃって。そういう世界に触れたことがなかったので…。
ツイッターには家出をしたい子どもたちが使うハッシュタグがあって、そこで知った家出をして行き場がない子をサポートしているボランティア団体に電話もしました。でも両親の事を悪く言われたり、信用できなくなって。
結局ツイッターなので本当に女性かはわからないですけど、自称女性の方のところへ行こうとしました。行った先で働けるように、親に内緒で住民票のコピーも取ってました。結局、家出はしなかったんですけど。
――見ず知らずの相手のところに行こうとする時点でかなり危ういですね。どうして家出せずに踏みとどまれたんですか。
行かなくて済んだのは春が来たからですかね。なんだか詩人みたいですけど。気候が温かくなって、その頃には図書館で毎日TOEICの勉強も始めました。あと筋肉が衰えていたので、取り戻すために毎朝ジョギングをしたんです。そうすると正気に戻りました。
その後に親にダメだろうなと思いながら一人暮らしの相談をしたら、了承してくれたんです。そこからは気分が整いました。部屋探しだったり、どんな部屋にしようかなと考えるのが楽しくって。節約方法とかをYouTubeの動画で見ながら家を出るのを楽しみにしてました。
――家から出られることで悩みも解決したわけですね。そこからSKEに復帰するまでの間、戻りたいという気持ちはあったんですか?
それが最後までなかったんですよね。ただ「戻らなきゃ、応援して頂いている方が待っている」と思ってました。復帰してからはやりがいを感じていたんですけど。ただ自立したいという思いが強かったですね。早く昇格して、一人で自分のお金で生活していきたいって。
――復帰した後の12月には無事SKEの正式メンバーに昇格します。念願が叶ったわけですが、翌2022年2月には卒業を発表します。何があったんですか?
私は昇格=自立だと思ってたんです。でも昇格してみると難しいなと感じて。
――周りは自立してるんじゃないんですか?
そんなことないですよ、実家暮らしの方々が多いですし。そこを見てたんで生ぬるい世界ではないんだなと感じていて。自立かアイドルか、どっちを取ろうかと考えて、最終的に自立を取りました。
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