不倫相手との「墓」を買った50歳夫に妻が激昂 「あんたの工場なんか簡単に潰せる」の決定的修羅場
なぜ彼女と一緒にいるんだろう
もちろん、秀一さんは謝った。だが墓を解約するつもりはなかった。この正月もその話でユリさんはまた怒りをぶつけてきた。
「ユリは『私があなたの工場を潰すことなんて簡単にできるんだからね』と捨て台詞を吐いたんですよ。これには僕がカッとなってしまった。『そんな無責任なことを軽々しく言わないでほしい。働いてくれている人たちのことを何だと思ってるんだ』と。睨み合いになりました。どちらも目をはずそうとしなかった。そのとき、ふと、僕はなぜ彼女と一緒にいるんだろうと思ったんです。ユリがどう感じたかはわからない。だけど、それきりユリとは会っていないんです」
事務的な連絡はとっているが、ゆっくり話すこともないまま1ヶ月半がたっている。夫婦関係はすでに破綻しかかっているのだろうか。
「ユリと数ヶ月会わないことはこれまでもありましたが、今回ばかりはちょっと状況が違いますからね……。ユリが離婚したいなら、そうするしかない。正直言って、僕はどちらでもいい。そんな気分です。やっぱり僕は愛情関係がよくわかってないんですよ。今、母が入院しているので、僕が母のために引き取った2代目保護犬のめんどうを見ていますが、いちばん気持ちが安らぐんです。今でも信頼しているのは犬だけなのかもしれません」
愛情というものがどういうものなのかがわからない、そしてそれをどう表現したらいいかわからない、さらに形にするにはどうしたらいいかわからない。彼はそう独りごちた。彼のユリさんへの愛は、彼女を「妻」や「嫁」の枠に押し込めず、好きなように生きてもらうことだった。美香子さんには墓の共同購入だった。それぞれに愛情表現をしたつもりだが、ユリさんにはわかってもらえなかった。
この先、どうしたらいいのか、どうすべきなのか。すでに彼はそれを放棄している。ユリさんがどう出てくるかを待っているところだ。
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美香子さんと自分を結びつける形あるものがないと墓を買った秀一さんだが、とはいえ、まだ50歳である。美香子さんにしても55歳だ。「終活」を考えるにはさすがに早すぎるのではないか。
亀山氏の取材に対し、秀一さんは事あるごとに「一緒に入りたくないといったのは妻のほう」「一般的な夫婦のありようを最初から拒否していたのはむこう」と口にしている。美香子さんとの墓を購入するという行為に、ユリさんへの当てつけの意識はないのだろうか。仮にユリさんが折れ、秀一さんと一緒の墓に入りたいと言い出したらどうするのだろう。
離婚したいならどちらでもいいいと秀一さんは言うが、墓まで買うくらいなのだから、美香子さんと添い遂げたい気持ちがあってもよさそうだ。ビジネス上の付き合いという口実はあるにせよ、それを自らしようとしないのは、ユリさんに対する歪んだ形での未練がある証拠といえる。
不倫相手の身でありながら、共に入る墓を買おうと持ち掛けた美香子さんもなかなかである。夫と関係をもった女性が、そのうえ息子と同じ墓に入ろうとしていることを秀一さんの母は知っているのだろうか……。
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