不倫相手との「墓」を買った50歳夫に妻が激昂 「あんたの工場なんか簡単に潰せる」の決定的修羅場
ユリさんとの出会い
東京の私立大学に進学、家から離れてアパート暮らしとなった。理系だったため実験が多くてなかなかアルバイトができず、「いつもお腹をすかせていた」という。そんなとき助けになってくれたのが、同期のユリさんだった。文系の講義もとっていた彼に話しかけてきたのが彼女で、彼の苦学生ぶりに同情したのか、よく食事を奢ってくれた。
「あとで知ったんだけど、彼女はなかなかのお嬢だったんですよ。僕は恋愛という気分ではなかったけど、『アパートが見たい』と彼女が言うから連れて帰りました。若いしね、当然、そういう関係になりますよね。そうしたら彼女は一気に恋人気取り。大学にお弁当を持ってくるようになった。おいしかったけど、かっこ悪いからやめてほしいと頼むと、じゃあ、一緒にお昼を食べに行こうと、学食ではなくて大学近所の喫茶店などでごちそうしてもらいました。悪いからいいと断ると彼女、大きな目に涙をためて恨めしそうに見つめるんです。そんな目で見られたら、わかった、行こうと言うしかなかった」
秀一さんのどこがそれほどユリさんを惹きつけたのだろうか。学業にがんばっている姿なのか。そう問うと秀一さんは苦笑した。
「見た目じゃないことだけは確かですが、実は僕にもわからなかった。彼女に聞くと、彼女自身も『うまく言葉では言えないけど、何か感じるものがあるの』と。ただ、のちに思ったのは、僕が彼女に惹かれていなかったからではないでしょうか。彼女は決して高飛車な女性ではなかったけど、自分が嫌われるはずはないという確固たる思いがある。愛されて育ち、ほとんど挫折を知らない人の特徴なのかもしれない。実際、彼女を嫌う人などいませんでした。率直で、聞かれれば自分の意見をきちんと言えるけど、決してでしゃばらないタイプで、しかもかわいい。周囲の男たちからちやほやされていましたよ。でも僕は彼女を特別視はしなかった。というか、できなかった。恋愛感情というのがどういうものかよくわからなかったから」
秀一さんとユリさんは結局、学生時代、ずっと「つきあって」いた。周りもそう見ていたし、彼自身、だんだんと「ユリがいるのが当たり前」になっていった。だから卒業後、ユリさんが留学すると言い出したときは、心底びっくりしたという。
「僕は就職が決まっていたし、ユリは大学院に行くのかなと思っていたんです。つきあいは続くと信じ込んでいた」
ユリさんは「私が帰ってきて、あなたがまだひとりだったら、また会おうね」とあっけらかんと去って行った。もともと卒業してもつきあうつもりはなかったのか、自分のことなど好きではなかったのかもしれないとかなり落ち込んだ。彼女は自己満足のために「僕を哀れがっていただけかもしれない」とさえ思った。
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