【舞いあがれ!】最終回まであと1か月 IWAKURAの「笠やん」をなぜ最大級のヒーローにしたのか

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回り道は無駄ではない

 なにわバードマンでの時間も無駄ではなかった。OBで東大阪市役所職員の安川龍平(駿河太郎[44])は、IWAKURAなどの町工場が地域住民に親しまれるためのオープンファクトリーに協力してくれている。

 やはりOBの浪速大准教授・渥美士郎(松尾鯉太郎[22])もゼミの学生と一緒に手伝ってくれた。大抵の人は実感済みだろうが、中学や高校、大学で得られる一番の財産は、学びより人との繋がりだ。

 ちなみに渥美は舞の1年先輩。スワン号の胴体をつくっていた。人の良さそうな学生だったものの、切れ者タイプには見えなかったので、准教授になっていたのには驚いた。もっとも、人生は往々にしてそんなものだろう。

 桑原氏は放送開始前から繰り返し、こう言っていた。

「力の強弱に関係なく、居場所や役割は誰にでもあるのだということを、物語全体を通じて描きたいと思っています」

 この言葉の意味も徐々に鮮明になってきた。舞も貴司も久留美も居場所と役割を見つけた。舞の五島列島での幼なじみ・浦一太(若林元太[28])も船大工として一人前になりつつある。やがては福丸百貨店社員・熊谷百花(尾本祐菜[26])と結ばれるのだろう。

 同時に垣間見えるのは桑原氏の学歴偏重社会への反発だ。まず主な登場人物である同い年4人の最終学歴をバラバラにした。大学中退の舞、高卒の貴司、看護学校卒の久留美。一太は5年制の高等専門学校(高専)を出た。桑原氏は意図的にそうしたに違いない。大卒は1人もいないが、それぞれが堂々たる人生を歩んでいる。

 一方、東大卒で学歴エリートとされる悠人は虚業に走り、蹉跌した。一時、マスコミで持ち上げられたが、転落すると、そのマスコミの餌食となった。やはり学歴エリートである医師・八神は頼りなく、久留美に対し不誠実だった。これは偶然ではないはず。桑原氏が、人間の価値は学歴とは違うところにあると考えている表れと見るべきだ。

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