語られない「障がい者の性欲」… YouTube出演で注目された、介助サービスの知られざる仕事内容
大阪府で暮らす小西理恵さんが、一般社団法人「輝き製作所」を立ち上げたのは2020年9月のことだった。これまでタブーとされてきた「障がい者の性」に寄り添うこと目的とし、性介助サービスを提供する活動も行う団体だ。『売る男、買う女』（新潮社）などの著書があり、夜の世界の仕事で働いた経験のあるノンフィクション作家の酒井あゆみ氏が、小西さんの活動を取材した。
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【写真】時に小西さん自らが介助サービスを行う 料金は60分1万8,000円だ
小西さんのことを知ったのは、私も出演した人気YouTubeチャンネル「街録ch」がきっかけだった。いわゆるアウトローな人々にインタビューを行う趣旨で、これまでガーシーこと東谷義和氏や元オウムの上祐史浩氏らも出演してきたといえば雰囲気はお分かりいただけるだろうか。そんな有名人をおさえ、現在までもっとも再生回数が多いのが、小西さんの出演回なのだ。
およそ1年前に動画はアップされ、現在までの再生回数は600万回を超える。 私はその再生数の多さと、彼女が出演時に放った、
「障がい者にも性欲があると知ってますか？」
という言葉に考えこんでしまった。いまだに「障がい者の性」がもの珍しく捉えられ、いかに知られていないかを象徴していると感じたからだ。
すこし自分の話をさせてもらうと――私は2007年に設立のNPO法人「ノアール」に理事としてかかわっている（もう一人の理事は社会学者の宮台真司さんだ）。「障がい者の性」をテーマに活動する団体で、福祉施設の関係者や障がい者専門の風俗店のオーナーらがサポーターとして協力している。
これまでもトークイベントや映画制作などの活動をしてきた。障がいをもつ代表自らが出演し、性的サービスを受ける場合や自力で性処理をするにはどうしたら良いのかのハウトゥ映像を制作したりもした。TENGA社協力のもと、身体が不自由でも使える補助具を作ったこともある。
こうした活動をしてきたにも関わらず、障がい者の性について小西さんの出演で初めて気付かされた、という人たちが大勢いた。自分の至らなさを恥じるとともに、小西さんの存在に希望も感じ、ぜひ話を聞いてみたいと思ったのだ。
風俗店を利用する「ハードル」
「輝き製作所」の所長として活動する小西さんは、啓発動画の作成や講演会への登壇といった活動に加え、自ら障がい者への性介助サービスをおこなっている。全国を走り回り忙しいにもかかわらず、この取材のためにわざわざ東京まで足を運んでくれた。
彼女の存在が知られることとなった「街録ch」への出演のきっかけは、別の回に出演した知人からの紹介だったという。ここに書くのははばかられるが、動画には彼女の「障がい者専門風俗嬢」としての活動をかなり生々しく描写したタイトルがつけられていた。もちろん顔出しでの出演だ。
「『輝き製作所』を立ち上げようと決めたときから、自分の顔や名前、過去についてもきちんと明かさないと、と思っていたので抵抗はありませんでした。ただ、若い時からお世話になっていた方々には伏せていた経歴もあったので、そこは少しだけ悩みましたね」
小西さんの「経歴」とは、風俗店での勤務を指す。現在の活動を始めるきっかけのひとつに、障がい者専門の風俗店で働いたことがあったからで、そこは避けては通れない。
「『街録』に出演したら、これは滅茶苦茶、怒られるやろうな、と思ってたんです。でも、全く逆の反応で、日本全国の障がい者の方やそのご家族、施設関係者のかたから『話を聞かせて』って問い合わせが殺到したんです。それで『こんな（周知が）足りてないんや。これはどうにかせなあかんな』と思っていろんな人に話を聞きにいきました。『私に何かできることはないですか』という連絡も頂きました。いま、法人のほうは母親が役員にもなってくれたので、私にとっては本当に良い方向に行ってると感じています」
活動がそれほど注目された背景には、彼女自身が性サービスを提供していることが関係しているだろう。彼女のもとには全国から障がい者およびその家族から相談が寄せられる。遠方であれば相談者の近隣にある、障がい者を受け入れ可能な性風俗店をまず紹介する。すでに活動に理解を示し繋がりがある店が全国にあるが、地域によっては小西さん自らが店に電話をかけ受け入れの可否を尋ねることもあるという。
「意外に思われるかもしれませんが、どのお店も親身に話は聞いてくれるんです。ただ、お店の構造上、車いすが入りづらいとか、お店としては受け入れ可能でもキャストさん（女性）がどう対応したらいいか分からずOKしてくれないとか……。とくに知的発達の面でコミュニケーションがとりにくいと、どうしてもハードルは上がってしまう実情があります」
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