「長生き」が最大のリスク? 豊かな老後に必要な月給10万円の「小さな仕事」
繰り下げ受給を選択できる
1500万円といっても難しい方も多いと思いますが、70歳を過ぎるまで「小さな仕事」に従事し、残り20年ほどを働かずに過ごすと想定した場合は、平均的な年金給付に加えて1千万円ほどの貯金があれば安心して老後を過ごすには十分だと思われます。
もちろん「小さな仕事」のメリットは“貯蓄が少なくて済む”ということだけではありません。
例えば年金の繰り下げ受給という選択肢を持てるのも「小さな仕事」の利点といえます。厚生労働省の調査によれば、令和2年度における老齢厚生年金の繰り下げ率はたった1.0%。しかし、年金の受給開始年齢を70歳まで繰り下げることができれば受給額は約4割増しに、75歳まで繰り下げれば約8割増しとなりますから、繰り下げ受給はもっと積極的に検討していいと思います。
例えば、もともとの年金受給額が月20万円の世帯であれば70歳まで繰り下げるだけで受給額は約28万円に増加する。「家計調査」によれば70代前半世帯で月々の支出は29.9万円、75歳以降にはこれが26万円前後にまで落ちますから、繰り下げ受給をするだけで70歳以降はほとんど貯金を取り崩す必要もなくなるのです。仮に定年後も夫婦それぞれが月15万円から20万円の収入源を持っていれば60代で年金を受給する必要はありませんから、自分たちがどこまで繰り下げることができるか、一度冷静に考えてみるべきでしょう。
最大のリスクは“想定外の長生き”
この手の話では「いつまで生きられるかも分からないのに、繰り下げ受給は損だ」ということがよく言われます。でも、そもそも公的年金は損とか得とかいう尺度だけで測ればよいわけではありません。高齢期の家計における最大のリスクは何といっても“想定外の長生き”です。年金は、あくまでもそのリスクに備える“保険”と考えるべきではないでしょうか。
当然、繰り下げ受給にも注意点はあります。もともとの年金受給額が20万円を大きく超えている場合などでは、繰り下げ受給をすることによって税金がかかってしまったり医療保険の窓口負担が上がってしまったりすることがあるのです。ただ、国民年金にしか加入していない人や厚生年金でも世帯の年金額が月20万円に届かない人などは、本当に働けなくなる時期に備えて、積極的に繰り下げ受給を検討した方がいいのではないかと思います。
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