「長生き」が最大のリスク? 豊かな老後に必要な月給10万円の「小さな仕事」
赤字は月に10万円
一方で先述した通り、60代後半世帯の家計の支出は月32.1万円でしたから、単純計算で約7.6万円のマイナスということになります。つまり、50代には月約60万円もの収入がなければ家計を維持するのが困難だったのが、定年退職後は夫婦2人で月10万円程度の赤字を埋めることができれば、十分暮らしていけることになる。70代以降はさらに家計の支出が減りますから、自助で補填しなければならない赤字幅も月に5万円前後ということになります。
仮にこのマイナスを預金などの取り崩しだけで補おうとすれば、金融庁のワーキンググループが試算したように2千万円程度の資産がなければ途中で生活が立ち行かなくなってしまう。ところが、資産の取り崩しではなく、「小さな仕事」という選択をすればどうなるでしょうか。
半数の人は貯金1500万円以下で定年
月10万円といえば、時給千円の仕事なら月100時間程度、すなわち1日6時間なら週4日、1日8時間なら週たった3日の勤務でほぼ達成できてしまう。時給1500円なら同じ時間で約5万円多く稼ぐことができますし、夫婦ともに働けば家計にはさらに余裕が生まれます。月10万円の収入でも計算上は2万円程度の余剰が生じますから、その分を貯蓄に回せば、働けなくなったときの備えをさらに増やすこともできる。
つまり、定年後に「小さな仕事」に従事すれば、2千万円もの資産を有していなくとも安定した生活を送ることが充分可能です。
実際に金融中央広報委員会が2020年度に行った「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、60代の金融資産の平均値は2154万円で、中央値(データを大きい順に並べた際に真ん中にくる値)は1465万円。半数の人は貯金が1500万円以下で定年を迎えるのです。
平均値を見ると2千万円を超えているじゃないかと思われるかもしれませんが、貯蓄などの場合、一部の資産家が平均値を大きく引き上げてしまうことが多い。そのため、一般的な家庭の貯蓄額は中央値の1500万円程度と考えていいでしょう。
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