「長生き」が最大のリスク? 豊かな老後に必要な月給10万円の「小さな仕事」

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日本の高齢者のスタンダードな働き方とは

 もちろん現役時代に貯蓄に励み定年後は悠々自適の隠居生活を送っている高齢者もいるでしょう。その対極で、高齢になっても生活費を捻出するために現役時代と同じように必死に働かなければならない人もいると思います。でも、今の日本ではどちらの例もスタンダードな高齢者の姿ではありません。私がさまざまな人の老後を調査する中で見えてきたのは、給料が月10万円程度の「小さな仕事」に無理なく従事することで、幸せな生活を送っている人たちが多くいるという現実だったのです。

 この「小さな仕事」の実態を明らかにするために、まずは定年後にどのような生活が待ち受けているのかを知る必要があります。現役時代には、会社の先輩や上司を見ていれば何となく5年先、10年先のキャリアや生活水準を思い描くことができました。でも、定年後の生活は多くの人にとってブラックボックス。そこで、老後の生活がどのようなものなのか、客観的なデータで読み解いていくことにします。

年齢ごとの家計支出

 総務省の「家計調査」(2019年)を分析すると、2人以上世帯のひと月当たりの家計支出は34歳以下が月39.6万円。これが年齢を重ねるごとに増大し、50代前半に月57.9万円まで膨れ上がります。50代前半といえば子どもの学費や食費の負担がピークを迎える時期ですから、支出が最も増えるのは当然といえば当然です。

 その後、50代後半でも月57万円と高い水準で推移する家計支出は、定年を境に大きく減少します。60代前半で43.6万円、さらに60代後半で32.1万円と推移し、70代以降は20万円台後半で落ち着くのです。このデータから定年退職後には概ね月に30万円程度の生活費が必要となる、逆に言えば月に30万円あれば十分暮らしていけることが分かります。

 では、定年後の収入はどうなっているでしょうか。

 同じく総務省の「家計調査」によれば、仕事から引退した60代後半世帯の収入額は合計で月に約25万円。内訳は公的年金などの社会保障給付が月19.9万円、確定拠出年金などを含む保険金が月2.7万円、そのほかの収入が月2.2万円となっています。

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