「長生き」が最大のリスク? 豊かな老後に必要な月給10万円の「小さな仕事」

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 定年後の月々の出費はどれほどで、もらえる年金はいくらなのか。そもそも自分は何歳まで生きるんだ……。備えても、備えても“一寸先は闇”なのがリタイア後の人生。“想定外の長生き”に困窮しないために、考えておくべきは「小さな仕事」という選択肢だった。【坂本貴志/リクルートワークス研究所研究員・アナリスト】

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 定年時点で2千万円の資産が必要になる――。

 2019年、金融庁のワーキンググループが公表した報告書の文言を巡って日本中が大騒ぎとなりました。中には、この数字に影響されて「あと数年で2千万円もためられない」とか、「2千万円をためる前に退職してしまった」などモヤモヤした思いを抱えたまま日々を過ごしている中高年の方もいらっしゃるかもしれません。

 確かに、現代の日本において公的年金の収入だけで老後の生活が成り立つという方はかなり少ないと思います。預金を取り崩す生活では長生きすること自体がリスクになってしまいますし、精神的負担も大きくなってしまう。でも、仮に2千万円の貯蓄がなくとも、定年退職後に豊かな消費生活を送ることは不可能ではありません。

 では、老後のお金の心配から解放されるためには、どうすればよいのか。解決するカギはズバリ“定年後も働く”ことにあるのです。

「小さな仕事」に転職する

〈そう話すのは、昨年8月に『ほんとうの定年後』(講談社現代新書)を上梓した坂本貴志氏だ。

 厚生労働省で社会保障制度の企画立案などに従事し、現在はリクルートワークス研究所で「定年後の仕事」について調査・研究を行う坂本氏に、高齢期の新たなスタンダードを聞いた。〉

 リタイア後にお金が足りないなら、リタイアしなければいい。当たり前すぎる理屈に、キツネにつままれたような気持ちになった方もいるでしょう。

 ただ、私がここでお伝えしたいのは、単に“働き続ける”ことではありません。多くの人は60歳で定年を迎え、場合によってはその後数年間、嘱託の従業員として同じ会社で働き続けることになる。私が言いたいのは、この定年や定年延長が期限を迎えるタイミングで、無理なく従事できる「小さな仕事」に思い切って“転職”することなのです。

 世の中を見渡してみれば、実にさまざまなところで高齢者が働いていることに気付きます。公共施設の管理人、駐車場の案内役、ガードマンに農業従事者、小売店の店員、清掃員……。どれも大企業のサラリーマンのような高給は望めない「小さな仕事」ばかりです。

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