各国大使が乗りたがる「宮内庁の馬車」とは? 経験者らは「サイコーだった!」

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 近代的なオフィスビル街の中を、貴族でも乗せていそうな海老茶色の儀装馬車が騎馬隊とともに走り抜けてゆく。東京・丸の内を歩いていると、そんな場面に出くわすことがある。新任の外国大使を乗せた馬車列だ。

 2月3日、宮内庁などは東京駅と皇居の間を往復するコースで、儀装馬車を走らせる予行演習を行った。コロナ禍で中止になっていた馬車列を復活させるためだ。

 この馬車列、見物するのはそれほど難しくなかった。新任大使があいさつのために天皇陛下に面会する「信任状捧呈式」は年間数十回あり、宮内庁もホームページで告知していたからだ。往路は東京駅の丸の内側を出発し、和田倉門交差点を通って皇居正門をくぐり、宮殿南車寄まで。帰りは逆のルートだ。タクシーだとほぼワンメーターの距離だが、もちろん無料送迎である。

 皇室ジャーナリストの久能靖氏が言う。

「新任大使は捧呈式に向かう際、自動車か馬車のどちらかを選ぶことができますが、外国で馬車に乗せてくれる例はあまりない。2013年にはキャロライン・ケネディ米国大使が馬車を使ったことで話題になりましたが、実際には他の国の大使も馬車が珍しいので皆さん乗っています」

大使経験者は“サイコーだった!”

 宮内庁によると馬車は大正2年に造られたもので、4人乗り。2頭の馬が引くことになっている。正式には「儀装馬車4号」と呼ばれ、このほかに上皇ご夫妻が御成婚の際にお乗りになった2号など、3台の儀装馬車が皇居にある。馬は宮内庁の車馬課主馬班が管理しており、普段は皇居の東御苑につながれている。馬車を引くための馬は14頭いるという。

「輓馬は栃木県の御料牧場で育てられますが、静かで広々とした環境のため都会の喧騒(けんそう)を知りません。そこで、皇居に連れてきてからは自動車の往来や群衆に慣らし、少々のことでは驚かない、落ち着いた馬に仕上げるのです」(同)

 実際、宮内庁の記録でも信任状捧呈式の送迎に使われた馬車が事故を起こしたことはない。だが、馬も動物である。走っている途中で粗相をすることはあるだろう。その場合は、

「適切に処理しております」(宮内庁総務課報道室)

 とのこと。そして、やっぱり気になるのは乗り心地である。

「外国の大使経験者に尋ねると誰もが“サイコーだった!”と言うようです」

 と久能氏。外交でも“馬力”を発揮しているのだ。

週刊新潮 2023年2月23日号掲載

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