田中将大とダルビッシュ有が達成目前とはいえ…「200勝投手」は“絶滅危惧種”

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2010年以降は「黒田博樹」のみ

 今年も多くの記録達成が期待される野球界。中でも注目が集まるのが、田中将大(楽天)とダルビッシュ有(パドレス)の日米通算200勝だ。過去に達成したのは野茂英雄(元近鉄など)、黒田博樹(元広島など)の2人だけだが、田中はあと10勝、ダルビッシュはあと12勝に迫っており、揃っての大記録達成も十分に期待できそうだ。【西尾典文/野球ライター】

 しかし、この2人に続く投手としては通算183勝の石川雅規(ヤクルト)がいるものの、今年で43歳という年齢と、近年の成績を考えると200勝達成は簡単ではない。石川に次ぐ投手では、前田健太(ツインズ・日米通算156勝)、和田毅(ソフトバンク・日米通算155勝)、涌井秀章(中日・154勝)が150勝をクリアしているが、前田はトミー・ジョン手術からの復帰途中、和田と涌井は年齢的なこと(今年で和田=42歳、涌井=37歳)を考えると、200勝はまだまだ見えてこないというのが現状だ。

 日米通算を含めた200勝、250セーブ、2000本安打が“名球会”の入会資格となっている(※藤川球児と上原浩治は、未達成も特例により2022年に入会)。ただ、2010年以降に200勝をクリアしたのは、前述した黒田(2016年に達成)だけである。

 一方で、2000本安打は、日本で2安打しか放っていないソリアーノ(元ヤンキースなど)を除いても、2010年以降に19人が達成。また、250セーブについては、過去に3人しか達成していないものの、平野佳寿(オリックス・日米通算221セーブ)、山崎康晃(DeNA・207セーブ)、松井裕樹(楽天・197セーブ)、益田直也(ロッテ・182セーブ)、増田達至(西武・175セーブ)らが控えている。今後数年で“達成ラッシュ”となりそうだ。

“データ分析”がハードルを高めた

 これらと比較すると、いかに「通算200勝」のハードルが高いかがよく分かるが、その背景にあるものは、ここ数年で進化が著しい“データ分析”によるものではないかという。

「2015年にメジャーの全球場で投球、打球のデータを全て数値化できるシステムが導入され、日本でもそれから数年後に、各球団の本拠地でトラッキングシステムが導入されました。これよって、これまで見えなかったデータが数値化されるようになった。特に大きいのが、ピッチャーの投げるボールに関するデータですね。これまで見えなかったボールの質が、数字として見えることで、バッターは、より対策が立てやすくなっていますし、データの多い先発投手は研究されやすくなりました。もう一つ、200勝のハードルが高くなった理由をあげるならば、投手自身がレベルアップしたことではないでしょうか。トレーニングで球速が上がると、それだけ肘の靭帯にかかる負担が大きくなる。事実、断裂した靭帯を再建するトミー・ジョン手術を受ける選手が増えています。先発投手として長く結果を残し続けることは、昔よりも難しくなっています」(プロ野球球団アナリスト)

 ダルビッシュは15年、前田は21年にトミー・ジョン手術を受けており、田中は手術を回避するも、14年に右肘靭帯の部分断裂で、長期離脱を余儀なくされている。データ的に打たれづらい球は、やはり速いボールである。球速をアップさせるトレーニングは確立されつつある一方で、投手の体にかかる負担は大きくなっている。

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