「2代目が見つかったら泣いてしまうかも」 文筆家・門賀美央子がどこに行くにもスリッポンを履く理由

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いざ別れが来たら酒宴を

 人生には、どれだけ肌のあう相手でも別れねばならない時がある。

 今はまだ2代目探しの段階だが、無事見つかったら彼とは永遠の別離になるだろう。いざそうなったら、私は涙するかもしれない。この数年、山でも海でも知らない街でもよその国でも、ずっと共に歩いてきたのだ。私が偉人であれば記念館展示用として保存しておくのもよかろうが、しがない物書きが履きつぶした靴など何の価値もない。私以外にとっては。

 いざ別れがきたら、私は彼のためにきっと酒宴を設けよう。ベランダでともに月明かりでも浴びながら、思い出を語り合おう。そして翌朝、彼だけのために用意したビニール袋にそっと収め、心静かに送り出そう。あふれる感謝を捧げながら。

 残された時間はそれほど長くないだろう。けど、あと少し、もう少しだけ頼むぜ。な、相棒。

門賀美央子(もんが・みおこ)
1971年、大阪府生まれ。文筆家。著書に『死に方がわからない』『文豪の死に様』『ときめく御仏図鑑』『ときめく妖怪図鑑』など。

デイリー新潮編集部

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