東芝の巨額TOB、大本命はオリックス? 「買収額が微妙で不成立になる可能性」という指摘も

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 ドタバタが演じられ続けてきた東芝劇場にもようやく幕が下りるのだろうか。2月9日、東芝の経営再建のため、投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)の連合が最終的な買収提案を行ったことが分かった。JIPが投じる資金は、2兆2千億円規模だとされる。

 全国紙経済部の記者が解説する。

「東芝は筆頭株主のエフィッシモ・キャピタルなど“モノ言う株主”から株主還元について猛烈なプレッシャーを受けてきました。そのため、英の投資ファンドからの買収提案を発表したり、グループ分割による株主価値の向上を提案してきたのですがいずれも頓挫。窮地に立たされた同社は昨年、再建案を公募することにして、最終的に絞られたのがJIPだったわけです」

 提案内容はJIPが東芝株のTOB(株式公開買付)を行い、株式を非公開化する。そのうえで経営改革を行い、再上場するというもの。今回、買収提案にこぎ着けたのは、JIPが三井住友銀行などから1兆4千億円の融資の約束を取り付けられたからだ。もし、再建がうまくいかなければ、事業の切り売りによって借金を返済していかなくてはならない。

TOBそのものが不成立の可能性も

 それにしても巨額のディールを仕掛けるJIPとはどんなファンドなのか。

「JIPはみずほ銀行出身者が作った会社で、これまで日立国際電気や、すかいらーくといった会社に投資してきました。さすがに今回は案件が大きいため約20社からなる投資連合を組んでおり、最大の出資者であるオリックスが3千億円を出す予定です。そのため、買収提案はオリックスが主導しているともみられているのです」

 名門・東芝がリース会社の軍門に下るとささやかれているゆえんだが、先行きはそれほど簡単ではない。

「このたびの買収提案は、まず社外取締役で構成された特別委員会でチェックを受け、その上で取締役会に諮られる。結果、賛成となればTOBは成立しやすい。しかし、買収額の2兆2千億円という額は微妙です。現在の東芝の時価総額は約2兆円。TOBとなっても株主の利益は少ない。取締役会がそのことを重くみて賛成しなかった場合、TOBそのものが成立しなくなる可能性があります」

 元のもくあみというドラマ展開は、東芝劇場の「十八番」である。

週刊新潮 2023年2月23日号掲載

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