期待を裏切った阪神の“ダメ助っ人列伝” 「ヒット1本500万円」に「実態は大型扇風機」という失敗の数々

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「野球がわかってないヤツが一人おるからな」

 当たれば飛ぶが、その実態は大型扇風機だったという相次ぐ失敗に懲りて、選球眼が良く、確実性のある中距離打者と見込んで、2008年に獲得したのが、ルー・フォードである。

 ツインズ時代は04年に打率.299、15本塁打を記録するなど、3年連続100試合以上に出場し、ハッスルプレーでも人気を博した新助っ人は「打順や個人的な数字よりも、とにかくチームの勝利に貢献できるよう、全力でプレーをしたい」と力強く抱負を語った。

 だが、7番という打順にもかかわらず、5月中旬まで打率1割台と確実性に欠け、2度の2軍落ちと期待を裏切った。

 7月19日に再昇格したフォードだったが、翌20日の中日戦で、0対5の4回に2点を返し、なおも1死一、二塁の追撃機に、打者有利のカウント2-1から、ワンバウンドの変化球を2球空振りして三振。見送れば四球も可能だったのに、この選球眼の悪さが致命的となる。

 9回の猛攻もあと一歩及ばず6対7で敗れた試合後、岡田彰布監督は「惜しかったという問題やない。野球がわかってないヤツが一人おるからな。4回のカウント2-1からの空振りよ。あのボールを振って負けよ」と真っ先にフォードを“戦犯”に挙げた。

 翌日、登録を抹消されたフォードは、2軍でも打率.243と結果を出せないまま、クライマックス・シリーズを前に寂しく解雇された。

コスパの悪い助っ人の代表格

 2018年、阪神の歴代助っ人の1年目では、事実上の最高額とされる推定年俸3億4000万円プラス出来高で入団したのに、「ヒット1本あたり500万円相当」とコスパの悪い助っ人の代表格になったのが、ウィリン・ロサリオである。

 ロッキーズ時代の12年に28本塁打を記録した右の長距離砲は、来日前年まで在籍していた韓国・ハンファでも2年連続3割、30本、100打点以上をマーク。4番候補の補強を急務とする阪神が、古巣・ハンファ、メジャー、日本国内の複数の球団との熾烈な争奪戦の末、獲得に成功した。

「韓国にいるときから日本の野球に興味を持っていた。(チームを)1位に導けるように、自分の仕事を全うしたい」と誓い、開幕から4番を務めたロサリオだったが、4月末までの23試合で、打率.275、2本塁打と物足りない数字にとどまった。

 さらに、外角低めの変化球にまったくバットに当たらない弱点が明らかになると、日本の投手の徹底した外角攻めに苦しみ、打順も7番まで下がった挙句、6月3日、「すべてを見失っている」(金本知憲監督)と2軍行きを言い渡された。

 7月に貧打線の起爆剤として再昇格をはたしたものの、大きな上積みはなく、再び打撃不振に陥り、8月27日に2度目の登録抹消。そのまま打率.242、8本塁打、40打点でシーズンを終え、最後まで4番が固定できなかったチームも、前年の2位から17年ぶりの最下位に…。“V請負人”になるどころか、金本監督のクビまで飛ばしてしまった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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