くりぃむしちゅーやアンタッチャブルと競り合うもコンビ解散…“地方局の顔”になったイケメン芸人は“芸能界引退”寸前だった

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帯番組決定で、妻は「じゃあ、引っ越しちゃおう。会社も辞める」

 驚いたことに、話が来たタイミングでは、芸能活動引退を考えていたという。なぜ辞めようと思っていたのか。

「2009年にどーよを解散した後も、僕はレポーターやナレーションなど、途切れずにずっと仕事をいただけていたんですね。どーよ時代にお世話になったディレクターさんやプロデューサーさんが今でも可愛がってくれて、何かが終わったら他のお仕事をいただけたり、そこから次につながる、みたいなことがずっと続いていたんです。それが19年10月でビタッと全部無くなりました。50歳の時です。僕は宅建などいくつか国家資格を持っているので、家族を食わせないといけないし、もう芸能の仕事は辞めて、いよいよそっちで生計立てるか、と決めていました。頭は切り替わっていましたから、ショックとか、引きずるような気持ちもなかったです」

 ところが、翌11月にマネージャーから帯番組の話を聞き、12月にオーディションを受けると、1月の半ばにMCの仕事が決まった。当然ながら引退の話は消え去り、それどころか……。

「最初は週4日出演、東京から通いで、という話だったんです。オーディションに合格したら、“週5日出演でも”という話もいただいて、それなら甲府に住んでしまった方がいいけど、まだ1人目の子供が小さかったんですね」

 当時、奥さんは会社勤めをしていて、育休中だった。

「合格と聞いた日、カミさんに相談したら“じゃあ、引っ越しちゃおう。会社も辞める”と、その日に移住が決まりました。2月の後半にはもうこっちに来ていました」

 相方のテルと同様、ケンキも東京を離れることを即決断し、甲府市に移住して新しい生活をスタートさせていた。

3ヵ月の猛勉強で「宅建」に一発合格

 ところで、引退についての話の中に、気になる言葉が入っていた。「宅建などいくつか国家資格を持っている」――。宅建は合格率20%以下。しっかり勉強しないと取れない資格のひとつだ。なぜ取ることに? そして他にどんな資格を持っている?

「45歳ぐらいから国家資格を次々に取って、今4つ持っているんですよ。最初が宅建(宅地建物取引士)、それから2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者、あと、これが一番難しいんですけど、マンション管理士です。合格率7%ぐらいです。本当はもう一つ、さらに難しい資格を取ろうと勉強していました。レポーターやナレーションの仕事が続いていたとしても、それが取れたら完全に引退しようと思っていたんです。でもその前に『スゴろく』のお話をいただけて」

 それまではこうした資格を取ろうとは思っていなかったといい、勉強していたわけでもなかった。45歳で一念発起した裏に、何があったのか。

「おふくろが亡くなって、人生観が変わったんです。僕は一人っ子で、父親は以前に亡くなっていたから、これで肉親がゼロになった。命って限りがあると心の底から実感しました。自分は今のままでいいのか。どう生きるべきか……、と考えたんです」

 当時はまだ現在の奥さんと結婚していなかったこともあり、“ひとりぼっち”になったことがより胸に迫ってきた。そして“どう生きるか”がリアルな問題として心に突き刺さった。

「芸人として頑張ってきたけど、もう売れようという野心もない。これからどうしようかと考えていた時に、親戚の集まりがあって、そこで宅建の話が出たんです。うちの親戚、不動産関係が多いんですよ。それで“宅建持っていたら、45歳でも仕事ある?”って聞いたら“全然あるよ”と。その時、年に一度の宅建の試験まで3ヵ月でした。“今から勉強したら取れるかな?”と聞いたら“3ヵ月で? ムリムリ!”“取ったら快挙だよ”と言われて、なんかカチンときて、“じゃあ取ってやる!”とそこから猛勉強したんです。結果、3ヵ月後の試験を受けて一発で取れました」

 宅建に合格したことで、目が開くような思いをしたという。芸能界では味わったことがない喜びを感じたのだ。

「頑張ったらちゃんと合格という結果が出た。それが新鮮でした。芸人って、いくら自分が頑張っても、結果が伴うわけじゃないんですよ。頑張ってなくても仕事が入ったり、滑ってもそれが良かったり、ウケてもダメだったり、何が良い結果に結びつくのか、どんな答えが出るのか、基準が全く分からないんです。資格試験を通して、努力がしっかり結果につながり、やればできるという自己肯定感も持つことができた。それで楽しくなったんです」

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