「認知症の母からもらった“贈り物”が」「ボケた父に感じた“哲学”」 表現者二人が体験した介護のリアル 高橋秀実×信友直子
認知症の自撮り映画
高橋 今もお父さんを撮っているんですか?
信友 はい。父は今102歳。母が亡くなった後も、自宅に一人で暮らしています。父は「120歳まで生きるぞ」と張り切っているんです。今でも「ココス」の濃厚ビーフシチューの包み焼きハンバーグを平らげる。だから、全然死ぬ気がしないんですけど、さすがにあと20年はないだろうと思うと、限りある時間を父と過ごした方がいいかなと思って、ちょくちょく呉には帰るようにしています。
高橋 お父さん、認知症的なところはないんですか。
信友 まったくない。私より物覚えがいいぐらい。逆に、私が将来、認知症になるんじゃないかと怖い。
高橋 怖いんですか?
信友 でも、認知症になったら自撮りして、第3弾の映画を撮ろうと考えると、少し気が楽になりました。たぶん認知症の人が自撮りした映画って、今までないんです。制作発表の時に、私が舞台あいさつで何と言うかが今から楽しみ。
高橋 自撮りするんですか。
信友 その映画に、独白は絶対入れようと思っているんです。私が今どんなことに、恐怖を抱いているかとか。本当に認知症になったら、やっぱりショックでしょうね。でも、そこでへこんでも治るわけじゃないから、もう撮るしかない。高橋さんは、認知症になることが怖くないですか?
高橋 妻を失うことのほうが怖いです。多かれ少なかれ今の自分は認知症だと思っているんで。認知症でも生きていけますけど、妻がいなかったら生きていけませんから。
信友 それは奥様への最大のラブレターですね(笑)。
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