「シェアハウスした芸人仲間は一人ずついなくなり…」 ザ・マミィ林田が振り返る「痛いほどに東京」な日々

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

田舎の人間が東京の人間に唯一胸を張れること

 キングオブコント2021で準優勝し、さまざまなテレビ番組で引っ張りだこのお笑いコンビ「ザ・マミィ」。ネタ作りの他、ドラマや舞台の脚本執筆も手掛けるツッコミの林田洋平さんが、故郷の長崎を飛び出し降り立った東京の街で見たのは、華やかな光だけではなくて……。
 
 ***

 飛行機の小窓から見える無数の光を見て、これが超えなければいけない人間の数だと思った。明確な夢があったわけでもなく、でもなぜか「俺が1番になる」と意気込んで、約12年前、地元長崎から上京してきた。田舎の人間が東京の人間に唯一胸を張れるのは「上京したことがある」という点だ。上京はすごいぞ。武者震いが止まらないぞ。東京で生きていく。あの時の決意だけで立っている時あるぞ。東京に押し潰されそうになった時、僕は小窓から見た無数の光を思い出す。

「わたしの東京」とは何か、それは「僕の人生」だと思う。親元を離れて東京に出て来て、僕の人生は動き出した。その全てが僕にとっての東京だ。

「全部が僕の大切な東京」

 初めて住んだ東高円寺の5畳一間のアパートも、銭湯のある生活に憧れ近くに越したのに湯の温度設定が高すぎてほぼ通わなかった桜湯も、白飯の上にイカ天をのせただけのものを弁当と言い張り売っていた弁当屋も、そこの暗くて口が悪いおばちゃんも、明るくて口が悪いなら成立するけど暗くて口悪いのはダメじゃんと思った僕の気持ちも、コインランドリーまでの近道も、洗濯物を入れるために買った黄色くて大きいカゴも、全部東京だ。

 銀座のショーパブでのバイト終わりに、何者でもなさ過ぎる自分を恥じながらとぼとぼ歩いたあの朝の道も、ネズミとカラスがこっちをにらんできて、それでも夜の大人たちより優しく見えたのが嫌で流したあの涙も、そのバイト先で好きになった女の子も、よくよく聞いたらその子と付き合っていた店長も、その店長が金がない僕のためによく食べさせてくれた焼き鳥も、店長に貸したまま返ってこなくなったキングダムの5巻も、人見知りでなかなかなじめずにいた僕のことを気にかけ、会う度に股間を弄ってくれたニューハーフのダンサーさんも、キッチンの王さんも、「私、昼は歌手やってるんだよね」と言いながらタバコを吸って、その度に喉を「ガーッ!」と鳴らして顔を歪めていたバイトリーダーの愛さんも、全部東京。僕の大切な東京だ。

次ページ:僕は東京が好きなのだろうか?

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。