松坂大輔、西武臨時コーチで若手投手陣に伝えた“投球の神髄”を探る!

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 そのコーチングスタイルは「静」だった。

 西武・南郷キャンプの第2クール(2月11日から4日間)で、日米通算170勝を誇る松坂大輔氏(42)が、古巣の臨時コーチを務めた。

 ブルペンでは、投手の左右、あるいは後ろから、じっと観察し続けている松坂コーチのもとへ、投球練習を終えた直後の投手が、自らの課題や疑問を投げかけてくるのを待ち、自らの引き出しからその処方箋を出すという、4日間の“松坂塾”が開講された。受講生の後輩投手たちが受け取ったその「答え」から、「平成の怪物」といわれた男の“投球の神髄”を探ってみた。

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 臨時コーチ初日。かつて、打席に立った打者が「視界から消えていく」とまで言わしめた宝刀・スライダーのコツを、松坂コーチは惜しみなく披露した。

 ブルペンでの投球練習を終え、松坂コーチのもとへ駆け寄ってきた“最初の質問者”は大曲錬。福岡大の準硬式野球部出身という3年目の右腕は「僕のスライダーは(曲がりが)ちょっと大きいので、そこをもうちょっと、小さくしたいという話をしました」という。

 答えは、実にシンプル。そのキーワードは「切る」だった。

「斜めに切るというスライダーは、真っすぐに(右腕を)絶対振らない」

 松坂コーチは、大曲にそう解説した。つまり、自分が投げようと想定しているラインを、振り下ろしていく右腕で“切断”するイメージなのだという。

「野球を始めてすぐ、最初に見出した頃です。よく、投げるフォームが一コマずつになっている写真があるじゃないですか? 松坂さんの、それを見ていました。野球といえば松坂さんでした」

 大曲にとっては、憧れの存在であり、常にお手本としてきた「理想型」でもある。

左手首を「捻るな」

 続いては、筑波大からドラフト2位指名で入団したルーキーイヤーの2022年、3勝に終わった左腕・佐藤隼輔が、松坂塾の“門”を叩いた。

 47球のブルペンでのパフォーマンスを、松坂コーチは佐藤の背後から熱心に見つめ続けていた。3勝4敗に終わった1年目の成績も把握済みだったのだろう。「そんないいボールを投げているのに、何で抑えられないんだよ?」と思わずそう声を掛けたのだという。

 その佐藤が気がかりだったというポイントは「昨季後半にスライダーでの空振り率が下がった」ことだったという。これに対する松坂からの答えは、左手首を「捻るな」だった。

 曲げようという意識が強くなり過ぎると、どうしても手首を大きく捻ってしまうことにつながってしまうのが、投手心理でもある。

 そうすると「膨らみが強くなってカーブに近くなる」と、佐藤も自らの悪癖に改めて気づかされたという。この弊害を抑えるために「手首の捻りを抑え、カットボールに近い軌道で投げる」というイメージを、松坂コーチから伝えられたのだ。

「去年、捻り気味に投げていて、カーブに近くなって、膨らみが大きくなった。あくまでストレートの軌道から投げるのが、空振りが取れるんですね。もう一回、スライダーを見つめ直しているところだったんですが、そのイメージに違いがなかったです。やっていることに間違いはないんだなと、改めて感じることができました」(佐藤)

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