【100万回 言えばよかった】直木は誰に殺害されたのか、その動機は？
TBSの連続ドラマ「100万回 言えばよかった」（金曜22時）が、回を追うごとに面白さを増している。ラブストーリーとサスペンス、ファンタジーが渾然一体となった異色の物語である上、観る側に「生と死」、「愛の本質」、「子供たちに対する大人の責任」など重たい問題を問い掛けている。
今後の大きな見どころは3つ
この作品のストーリーはまるで複雑で精巧なパズルのよう。今後の見どころはいくつもあるが、大きなものは3つだ。
（1）鳥野直木（佐藤健[33]）の幽霊は成仏し、消えるのか。（2）魚住譲（松山ケンイチ[37]）は直木を成仏させるため、体を貸し、相馬悠依（井上真央[36]）へ愛を告げさせるのか。その場合、魚住は死を覚悟しなくてはならない。（3）直木は誰が、なぜ殺したのか――。
3つの大きな見どころを整理し、考察したい。まず、直木の成仏を阻む現世への思い残しとは、悠依に愛を伝えたことがないこと。生前も死後も1度としてない。タイトルの「100万回 言えばよかった」はこのことを指す。
直木が悠依に対し、直接的に愛の言葉を告げるためには、魚住の体に乗り移らなくてはならない。魚住も直木にそれを提案していた。「どうしても悠依さんに伝えたいことがあったら、僕の体を使って」（前回第6話）
ところが、その後になって、魚住は自分の体に乗り移れる幽霊の近くにいると、やがて命を落としてしまうことが分かる。魚住家は先祖代々、霊視が出来るが、憑依できてしまう幽霊は危険なのだ。
魚住は命を賭して直木に体を貸すのか
それでも魚住は命を賭して、体を貸すかも知れない。直木と悠依の関係に胸打たれているからだ。「あなたたちは最高だ！」（第6話）。魚住は直木に愛の告白をさせてやりたい、それを悠依に聞かせたいと考えるだろう。
一方、直木と悠依も愛を語り合いたいはずだが、友情めいたものが芽生えた魚住を危険な目には遭わせたくないだろう。お互いを思い合っている心優しき3人が、どんな選択をするのか。その答えがストーリー終盤の見せ場となるに違いない。
直木は悠依を深く愛しているからこそ、新たな人生を歩んでもらいたい。一方、悠依も直木への愛が強いから、幽霊になろうが、生涯添い遂げたい。どちらが正しいのかは誰にも決められない。正しい愛の定義など存在しないからだ。
そもそも愛について考えた時、出てくる答えは理性と感情では異なる。それが悠依の言動で分かった。
この作品のモチーフと目される名作絵本『100万回生きたねこ』の主人公・とらねこは、100万回生き返るが、初めて愛した白いねこが死ぬと、朝から晩まで100万回泣き続け、やがて自分も死んだ。2度と生き返らなかった。
悠依は直木に対し、とらねこの生き方を否定した。第2話だった。
「（とらねこには）100万回泣いたら、元気にピンピンって生きて欲しい」（悠依）
理性による言葉だった。だが、現在の悠依は悲しみが止まらず、直木が消えることも受け入れられていない。感情が抑えられない。
一方、魚住は悠依が好きであるものの、2人が恋愛関係になるとは考えられない。魚住の悠依への思いは愛情とは異なるからだ。魚住は直木に対し「直木さんをひたすら愛している悠依さんのことが好き」と説明した（第6話）。
魚住は悠依が直木を一途に思い続けるところに惹かれている。魚住は過去、巡査・村中望海（穂志もえか[27]）から告白されて付き合ったものの、1カ月で一方的に振られた。このエピソードが第1話で明かされたのは伏線だったと見るべきである。
直木が1月13日に殺された事件の真相は輪郭が見えてきた。それを考える前に、1月12日に高原涼香（近藤千尋[33]）が絞殺された事件を整理しておきたい。実行犯は田中希也（永島敬三[35]）。2月24日に逮捕状が出た。
殺害を指示したのはチーちゃんこと武藤千代（神野三鈴[56]）に違いない。希也を手下扱いしている。希也の根城も千代の自宅兼洋菓子・刺繍教室だ。
動機は涼香が千代をゆすったから。涼香とその中学校時代からの友人・尾崎莉桜（香里奈[39]）は、千代によって少女売春をさせられていたらしい。それが、ゆすりの材料だ。
魚住も莉桜が少女売春に絡んでいたと見ている。莉桜が17歳だった20年前、500万円という分不相応な現金を持っていたためだ。
当時の莉桜は、直木や悠依と同じ里親・広田勝（春風亭昇太[63]）に預けられていたものの、失踪した。500万円は広田宅に残したままだった。
今年2月14日、千代は少女たちを洋菓子教室に集め、バレンタインデー用のチョコレート作りを指導していた。チョコが出来上がると、希也が少女の1人を車で送ることになった。この時、千代は不気味な含み笑いを浮かべた。いまだ少女たちを食い物にしているようだ。
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