ウクライナ侵攻に反対の声を上げないロシア国民の本音 「11年前の反政府デモでは新しいうねりを感じたが、今は……」
軍事行動は支持されているのか?
プーチン政権はウクライナ侵攻によって決定的になった西側の民主主義諸国との対立を煽り、一方で、ロシア国家への愛国心や忠誠心を高める取り組みを強化している。こうしたことから、「特別軍事作戦」と称する「プーチンの戦争」を支持している社会の雰囲気が広がっている。
レバダセンターは月1回のペースで「あなたは個人的にウクライナでのロシア軍部隊の行動を支持しますか?」との世論調査を続けているが、支持派が圧倒的多数を占めている。反対派は常時、20%前後の割合を推移しており、世論が政権に軍事行動をやめさせるための核にはなっていない。
軍事行動支持派は高年齢層であればあるほど多数となり、例えば2023年1月の調査では18~24歳で支持派は全体の62%なのに対して、歳をとればとるほどその割合は増え、55歳以上では82%に達している。
ロシアでは、1991年のソ連崩壊前の社会主義国時代を生きた「ソ連人」と、その後に生まれ、西側の民主主義の空気に触れ、スマホやネットにも慣れ親しむ「新世代」との間で、価値観に大きな開きがある。
ウクライナ侵攻をめぐる世論調査の結果でも、この世代間の溝が色濃く反映されている。
無力感を抱えながら、過酷な現実を受け入れるロシア国民
ロシアでは現在、国営メディアが大量のプロパガンダを流して、政権支持の情勢を作り出している。英字紙「モスクワ・タイムズ」は昨年10月、クレムリンに近い情報筋の話として、国営メディアや親政権メディアに、戦争に深入りするようなテーマを取り上げないよう政府が勧告を出したと報じている。状況を過熱させたり、人々を悩ませるような報道をせずに、日常の前向きなテーマに焦点をあてるよう指導しているという。
その結果、世論調査にもウクライナ情勢に関連するテーマを努めて取り上げないようにしている様子がうかがえる。
世論基金、レバダセンター以外のもう一つの大手世論調査機関である「全ロシア世論調査センター」がその代表格だ。2月に入り、バレンタインデーや10年前に落ちた巨大隕石にまつわる宇宙の話、ウィンタースポーツやロシアの科学界などに関する調査結果を相次いで発表し、およそ戦争当事国とは思えない世論調査の内容となっている。
日々、犠牲者が出ているウクライナでは戦争への懸念が高まる一方であり、決してバレンタインデーやウィンタースポーツに関心を持つ人はいないだろう。
モスクワ・タイムズは2月16日までに、ロシア各地の自治体が政府の指示で、ソ連時代に作られた地下シェルターの点検や改修などの整備に着手していると報じた。国民の犠牲と経済の損失を伴う戦争の長期化は避けられず、ロシア社会もその過酷な現実を受け入れているようだ。
レバダセンターは「ウクライナでの軍事行動はいつまで続きますか」との定期調査を行っており、「1年以上」の回答は月をまたぐごとに増加している。
2022年3月の調査で「1年以上」は全体の21%で、「2ヵ月~半年以内」が23%、「半年~1年以内」は23%とほぼ同規模だったが、次第に開きが顕著となって、2023年1月の調査では「1年以上」は22ポイントも増加して、全体の43%になっている。
侵攻2年目を迎えるロシア社会は、自分たちでは怒りの声も上げられないという無力感を抱えながら、一方で、政権の抑圧を恐れ、先行き不透明な現実が長期間続くことを受け入れているようにも思える。
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