ウクライナ侵攻に反対の声を上げないロシア国民の本音 「11年前の反政府デモでは新しいうねりを感じたが、今は……」
「私たちには政治を変える手段がない」
こうした状況を生み出している理由は、筆者の取材に応じたロシア人の証言で説明できるように思える。
今は、海外に暮らしているある30代のロシア人女性は2011、12年に起こった反政権デモに参加して、プーチン政権下のロシアの新しいうねりを体感した。しかし、今はそんな雰囲気では全くないとして、こう説明してくれた。
「2011年、12年のときは学校や職場を休んでも抗議デモに参加すれば、知った仲間がたくさんいて、その数は次第に増えていった。集会では若者が次々にスピーチし、将来への希望があった。しかし今はない。抗議デモにいっても、多くの人たちが拘束されるのを恐れている。単独で行動しても意味がない。だから反戦の機運が広がらない」
モスクワに居住するある男性も「今は政治を変えようと思っても、選挙も封じられ、私たちには変える手段がない」と訴えた。
反政権運動は治安当局によって厳格に抑えられている。しかし、怒りのマグマは動いており、ウクライナ戦争の悪化によって、日常生活への打撃が膨らめば、いつか「噴火」する可能性を秘めていることは間違いない。
ただ侵攻2年目に入る2023年2月の段階では、ロシア社会が落ち着いた状況にあるのは確かだろう。
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