不安に駆られて「抗うつ剤」がバカ売れ…ウクライナ侵攻1年でロシア世論はどう変わったか 昨年9月に激変した理由
「動員令は人々に危機感を植え付け、日常を破壊した」
プーチン政権が勝手に起こした戦争であり、自分と政治とは無関係という態度を取り続けた人々にとっても、開戦7ヵ月が経過してようやく、ウクライナでの戦争が「私事(わたくしごと)」になったのだろう。
薬局で自由に購入できる抗うつ剤や鎮静剤の利用は、夫や息子が動員されるというストレスを抱えた妻や母、年老いた祖父母が使用している実態が推察できる。こうした状況をふまえ、社会学者のグルコリー・ロジン氏は地元メディアに「動員令は人々に危機感を植え付け、日常を破壊した」と分析して見せた。
「心配」が「安心」を逆転しているロシア社会の雰囲気は、その後も続いている。
政権による規制がされておらず、ロシア・ウクライナ両国で人気のSNS「テレグラム」を通じて、露側にも大量のウクライナの戦況情勢のニュースが入ってきている。これを読めば、露側の情報が客観的ではなく、露側のプロパガンダであることが一般のロシア人にもわかる。
また、すでに動員令によって召集された新兵が戦死して、無言の帰宅を果たしているケースも相次ぎ、一般人にも戦争がもたらす災禍が現実化している。
「世論基金」の定期調査でも「心配」は昨年10月2日に70%に達し、その後、徐々に下がっては来ているものの、2023年に入っても「心配」が「安心」を上回っている状況にある。
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