令和になって「麻雀」人気復活のナゼ 数百万人?増える“観る雀”たち

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CS放送各局の麻雀熱

 麻雀に力を入れているのはテレ朝とAbemaTVばかりではない。日本テレビも系列のCS放送「日テレプラス麻雀リーグ」を放送中。やはりMリーガーである萩原聖人(51)も出演している。

 麻雀好きでしられる萩原は6年前に日本プロ麻雀連盟所属のプロになった。その打ち手は正攻法で、場を荒らすようなことを嫌う。引っ掛けリーチなどトリッキーなことも避ける。また、トップの可能性がある時は攻め続け、逃げない。人気プレイヤーだ。

「THEわれめDEポン」(1995~2008年)で麻雀番組の新領域を切り開いたフジはCS放送のフジテレビONEで「麻雀最極決定戦!サバイバルバトル極雀」を放送している。こちらにはプロは登場せず、芸能人ら著名人で争われる。割れ目はない。

 TBS系のCS放送・TBSチャンネル1はアイドルと麻雀の組み合わせに拘り続けており、現在は「元乃木坂46中田花奈の麻雀ガチバトル!かなりんのトップ目とれるカナ?」を放送中。出演するアイドルの中にはビックリするほど麻雀が下手な人もいるが、中田花奈(28)は強者。やはり日本プロ麻雀連盟に所属しており、Mリーガーとも渡り合う。

 中田は「麻雀カフェ chun.」(東京・赤坂)の店長でもある。麻雀が出来る一方で、カフェの利用だけでも構わない店だ。芸能人が飲食店の店長になる場合、名義貸しが多いものの、中田はオーナーである。

 CS放送ではほかにMONDO TVが冠大会「モンド麻雀プロリーグ」を流し、Vパラダイスも麻雀番組を放送している。いつの間にか麻雀はCS放送の定番番組の1つになった。

 ほぼ毎晩、深夜から明け方まで放送されている。「観る雀」が増えている表れだ。物語の行方が気になって眠れなくなる映画やドラマと違い、眠りに 落ちやすいのもいい。誰が勝つかは、さほど気にならないからだ。

 オンライン麻雀による脱・賭博の流れと、「観る雀」の増加は少年漫画界にも影響をおよぼした。昨年11月から1月下旬まで『少年ジャンプ+』(ネット版)で、ジャンプシリーズで初めての麻雀漫画「雀児」が連載された。

 少年漫画誌への麻雀漫画の連載は初めてではなく、かつては『週刊少年マガジン』も「哲也-雀聖と呼ばれた男」を載せていた(1997~2005年)。直木賞作家の故・色川武大(阿佐田哲也)さんによる傑作『麻雀放浪記』『ドサ健ばくち地獄』を下地にしていただけに、好評を博した。

 半面、終戦後の麻雀界が描かれていたため、明るくなかった。悪い奴らも次々と登場した。昭和の麻雀の悪しきイメージそのものだった。

「雀児」は対象的。舞台はなぜか現代の幼稚園。園長が教育の一環として園児に麻雀をさせる。女性教諭も一緒に麻雀を打つ。ハチャメチャな物語である。昭和を代表する成人向け麻雀漫画『哭きの竜』(1985~1990年)の愛読者は絶句するのではないか。

「観る雀」とオンライン麻雀愛好家は重複するものの、その合計人数は700万人とも800万人以上とも言われる。麻雀は復権した。昭和期は「賭けない麻雀などバカバカしい」という人が多かったが、今の人気は賭けない麻雀がもたらした。

 今後、麻雀映画やアニメも増えそうだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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