令和になって「麻雀」人気復活のナゼ 数百万人?増える“観る雀”たち
昭和の終わりと同時期に勢いを失い、衰退の一途を辿っていた麻雀が、復権していた。オンライン麻雀の参加人口は右肩上がりを続け、自分はやらずにプロのプレイヤー の試合を配信動画やCS放送で観戦する「観る雀」派も増えている。『少年ジャンプ+』が初めて麻雀漫画を連載したのも話題になった。麻雀は、なぜ蘇生できたのか?
オンライン麻雀の人気とMリーグの誕生
オンライン麻雀の先駆け的な存在である「オンライン対戦麻雀 天鳳」のサービスが開始されたのは2006年。インターネット普及率が約70% だったころだ。2010年には登録者が100万人を突破し、話題になったが、今では登録者が約655万人いる。ほかにも登録者が750万人以上いる「雀魂」などオンライン麻雀は10以上ある。
国外にサーバを置いている一部のものを除き、オンライン麻雀は金品を賭けられない。それでも登録者たちは頭脳ゲームとして楽しんでいる。将棋や碁と同じ感覚だ。
脱・賭博であるオンライン麻雀の人気を背に、2018年に誕生したのが「Mリーグ」。麻雀をプロスポーツの1つと捉える団体である。その考え方はeスポーツ(ゲームをスポーツと見る際の名称)に近い。
Mリーグは「日本プロ麻雀連盟」など5つの麻雀プロ団体から選抜されたトッププレイヤー32人が、4人ずつ8つのチームに所属し、秋から翌年春まで試合を行う。レギュラーシーズンからファイナルシリーズまであり、優勝チームを決める。
優勝チームに与えられる賞金は5000万円。随分とスケールが大きいと思われる人もいるだろうが、旗振り役で初代チェアマンがAbemaTV社長の藤田晋社長(49)と聞けば納得されるのではないか。
藤田社長は「FIFAワールドカップ カタール 2022」の全64試合をAbemaTVで無料生中継し、名前を広めた。MリーグもAbemaTVの「麻雀チャンネル」で配信されている。
視聴者側はトッププレイヤーの打ち方を観て楽しむ。将棋のプロ棋士の対局を観て楽しむ将棋ファンのことを「観る将」と称するが、こちらは「観る雀」と呼ばれている。
観る雀の増加と朝日新聞・テレ朝グループの思惑
「観る雀」も年々増えている。Mリーグ公式ガイドブックを発行するKADOKAWAによると、前期の2021-2022シーズンのファイナルシリーズ最終戦は300万人以上が観た。2018-2019シーズンの開幕戦の視聴者は55万人だったから、飛躍的に伸びた。
かなり本気の取り組みなのである。まず最高顧問が元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(86)。8チームのオーナーはAbemaTV、博報堂DYメディアパートナーズ、コナミアミューズメント、電通、U-NEXT、KADOKAWA、テレビ朝日、セガサミーホールディングスが務めている。電通が麻雀チームを持っていると知ったら、驚く人もいるだろう。
リーグスポンサーに名を連ねているのは朝日新聞や大和証券など。AbemaTVはテレ朝の系列会社(持分法適用関連会社)だから、朝日新聞・テレ朝グループとして麻雀に肩入れしていることになる。これも麻雀が脱・賭博に向かったから出来たことだ。
テレ朝は1週間の競技を振り返る「熱闘!Mリーグ」(日曜深夜0時59 分)も放送している。ノリは「熱闘甲子園」である。朝日新聞に牌譜が掲載される日も近いかも知れない。決して冗談ではない。朝日新聞・テレ朝グループは近い将来、麻雀がビジネスになると睨んでいるのだろう。
それを踏まえると、1月12日のテレ朝「アメトーーク!」(木曜午後11時15分)が、爆笑問題の田中裕二(58)や平成ノブシコブシの徳井健太(42)、ロバートの山本博(44)らを登場させ、「麻雀・Mリーグ芸人」を放送したのもうなずける。麻雀とMリーグの普及を推進させる一環に違いない。田中は「熱闘!Mリーグ」のMCでもある。
この日の「アメトーーク!」の視聴率は個人全体2.7%、コア(13~49歳の個人)3.0%、世帯5.0%で横並び2位(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。夜遅い時間帯であることを考えると、高い数字と言える。麻雀とMリーグが一定の認知度を得ている表れでもあるだろう。
番組にはMリーグに所属するMリーガーたちも出演した。その1人が岡田紗佳(28)。麻雀界のアイドル的存在だ。実際に現役のグラビアアイドルでもある。以前は『non-no』の専属モデルを務めていた。
麻雀を始めたのは青山学院大在学中で、最初はオンライン麻雀だったというから、やはり今どきの若者だ。2017年には日本プロ麻雀連盟所属のプロプレイヤーになった。
アイドル的存在がいることは、どんな業界にもプラス。ほかにも女性プロは多数いる。タバコの煙が充満した雀荘に男性の姿しかなかった昭和の麻雀とは違う。
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