羽生九段vs藤井五冠の勝負の行方を加藤一二三・元名人が分析 「大接戦になると思っていた」
“予想しない手を指す”
「藤井さんには、プレッシャーがかかっていると思いますよ」
と述べるのは、日本将棋連盟の常務理事を務める森下卓九段。森下九段は羽生九段と4回タイトル戦を戦い、いずれも敗れた経験を持つが、
「初めて(7番勝負の)タイトル戦で2勝2敗に持ち込まれた藤井さん。いつもと違う流れである上に、相手が大舞台で百戦錬磨の羽生さんですからね。いくら“AIの化身”と言われる藤井さんだって、まだ20歳の生身の青年でしょう。平常心を保つのは難しいと思いますよ」
実際、このシリーズでは、対局合間の取材時に、藤井五冠が「これくらいでいいでしょうか」と珍しく質問を打ち切る場面が見られたという。「(羽生九段は)予想しない手を指す」と語ったことも。
対して羽生九段はいつになく食欲旺盛で、食事にステーキ、うな重、トンテキなどを注文しているとか。
となれば、約半世紀前、40戦無敗と無敵の強さを誇った25歳のジョージ・フォアマンに全盛期を過ぎたモハメド・アリが挑み、ロープに体を預ける奇策で勝利を収めたボクシングの「キンシャサの奇跡」よろしく、羽生九段劇的勝利も見えてこようが、その点は加藤、森下両氏とも声をそろえて、
「ここまでくれば、十分に勝機はあるでしょう」
ポイントとなる第5局は25、26日に行われる。タイトル奪取ならば、まさに「中年の星」となるが、その結末は……。
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