オスのパンダは甘えん坊【パンダの知られざる素顔】
パンダは野生でも群れをつくらず、オスもメスもそれぞれ単独で暮らす動物。
発情期だけマーキングによって自分の存在を知らせ、1年に1度だけオス・メス急接近のチャンスが訪れる。
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また交尾が成功しても、その後は再び単独生活に戻る。だから無事、子どもが生まれても、父親となったオスが自分の子どもに出会うことはほぼないという。
パンダの子育てや性別による特徴について『知らなかった! パンダ―アドベンチャーワールドが29年で20頭を育てたから知っているひみつ―』から紹介する。
2歳までにひとり立ちして単独で暮らす
パンダは群れや家族単位の生活はせず、オスでもメスでも自分のテリトリー(縄張り)内で単独で暮らします。
子どもが1歳で竹を食べ始める前ごろから授乳回数が減ってきて、竹が十分に食べられるようになる1歳半ぐらいになると、母親は子どもの元に帰ってくる回数が減少してきて、遅くとも2歳までには親離れ・子離れをしていきます。
飼育下のパンダの頭数が少なかったころ、まずは全体の数を増やすことが大きな目的でした。中国の研究施設などでは、母体が次の妊娠に早く臨めるよう、生後3~4か月ほどで親子を離し、後は人工保育に切り替えていました。パンダの赤ちゃんがたくさん集められて、コロコロとしている映像を見たことがあるかと思います。専門のスタッフによって、保育園のように集団保育をしていました。
ところが、こうした手法で数は増えたものの、早く親離れしたパンダ――特にオスには、性成熟を迎えても、メスに興味を示さないなどの傾向が見られました。生後3~4か月以降は、運動機能が発達して木に登ったり、頻繁に親子で遊ぶなど多様な行動が発現してくる時期です。このころの親子の関わりにより、生きていくために必要な情報を得ることができるのです。
中国の飼育下では2005年以降、年間の繁殖数が20頭を超えるようになり、飼育頭数が順調に増加してきました。そこで、生まれたパンダが性成熟して繁殖に関与できるように、親離れの時期を野生と同じころまで延ばすようになりました。その結果、自然交配ができるオスが徐々に増加していきました。
ちなみに、双子でもおとなになる(メスで4~5歳、オスで6~7歳)前、3~4歳までには生活環境を別々にします。一見、遊んでいるように見えて実は攻撃に近い応酬をしていることもあり、放っておくと際限なく取っ組み合うので危険が伴います。
メスのほうが精神面での成長は早く、オスは同じ年齢でもメスより幼さが残ります。また、お母さんへの執着もオスのほうが強く、早くからひとり遊びをするメスに比べて、いつまでもお母さんにじゃれつきます。オス・メスの双子でも、ある時期になるとオスが甘えて近寄っても、メスのほうが威嚇に近い態度を示します。女の子の方がおませさん、は人間と一緒です。
ちなみに梅梅(めいめい)が2003年に産んだ隆浜(りゅうひん)・秋浜(しゅうひん)はオスの双子で、アドベンチャーワールドでは初めての双子でした。
私たちは、2頭の子ども同士でどのように遊ぶのか大変楽しみにしていましたが、実際には、それぞれが母親にじゃれついて、争奪戦になっていました。かなり大きくなってもお母さんの梅梅にまとわりつくさまは、まさにリアル「パンダだんご」でした。