ミサイル発射で北朝鮮の脅威を宣伝している場合ではない…彼らの“本当の弱さ”に目を向けるべきだ
英語の表現で恐縮だが、「No God but God」という言葉がある。そのままでは「神はいない、しかし神はいる」となるが、イスラムで「アラーの他に神はなし」と言う時の英語表現だ。北朝鮮のミサイル発射に、これを応用すると「(表面的には)脅威だが、(真の)脅威ではない」となる。
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北朝鮮は2月18日に、12発目の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を行った。20日には、長距離砲も発射した。ICBMの在庫が少ないから連発するのは無理で、短距離ミサイルも発射できない事情が見える。日本のテレビや新聞は、比較的大きく報じたが、アメリカのメディアの扱いは小さい。国際法違反だが、戦争になる脅威ではないからだ。
北朝鮮のICBM発射は、アメリカの気を引くために実行したのだが、真剣には相手にしてもらえなかった。欧米各国は、ウクライナ戦争の対応に忙しく、北朝鮮を相手にするヒマはない。国連安保理に、問題処理を任せた。
仕方がないから、金正恩総書記の妹は「太平洋を我々の射撃場にする頻度は、米軍の行動の性格にかかっている」と、アメリカを脅すような発言もしたが、無視された。この発言も、「米国の行動」とは言わずに「米軍」との言葉で、米政府やバイデン大統領を非難しないように気をつけている。なんとも涙ぐましい。
「米軍」表現の裏には、近く始まる大規模な米韓合同軍事演習を中止せよ、との要求が込められている。
この北朝鮮の「弱さ」を知らないと、北朝鮮のミサイル発射の本当の理由は、理解できない。大規模な米韓合同軍事演習が行われると、北朝鮮軍は「崩壊」の危機に直面する。米韓当局はこれをよく理解しているから、今年は連続した大規模演習を行う予定だ。「北朝鮮軍疲弊・崩壊作戦」だ。
情報番組やテレビ・ニュースは、ICBM発射を大々的に伝えた。しかし、何発保有しているかは報道しない。あたかも、日本を狙っているかのような報道。確かに日本に落ちたら脅威だ。脅威を煽る発言をするコメンテーターもいるが、これは北朝鮮の脅威を宣伝する解説だ。北朝鮮の弱さを全く理解していない。北朝鮮のミサイルが日本を攻撃する可能性は、ないと言っていい。
だから、北朝鮮のミサイルは脅威だが、本当の脅威ではない。たとえ日本を攻撃しても、北朝鮮軍が日本に上陸できなければ、意味がない。北朝鮮軍にその能力はない。
国際政治を分析する基本は、まず相手の立場になって考えることだ。もし、北朝鮮が日本にミサイルを発射したら、どうなるのか。
怖くて戦争できない
次のシナリオが、考えられる。日本は直ちに北朝鮮に報復攻撃する、米国も日米安保条約に従い、北朝鮮を攻撃する。国連安保理が開かれ、北朝鮮を侵略国と認定し、北朝鮮への武力行使を認める。また、最大級の制裁が実行される。そうなると、北朝鮮は滅亡に向かう。
だから、北朝鮮の立場で考えると、日本や韓国、アメリカを攻撃すれば、北朝鮮という国が地上から無くなる。北朝鮮は、これをよく理解している。ウクライナ戦争での、各国の対ロシア制裁を知れば、怖くて北朝鮮は戦争できない。
それならなぜ、ミサイル発射をするのか。北朝鮮は、米国の攻撃が、一番恐いのだ。北朝鮮は、核兵器を保有すれば米国は攻撃できない、と判断している。だから、核兵器は日本やアメリカを先制攻撃するために、保有しているわけではない。
もし、北朝鮮が日本やアメリカを核攻撃したら、米国の核兵器が北朝鮮に打ち込まれ、北朝鮮はたちまち崩壊する。それを知っているから、北朝鮮は核兵器の使用について、常に「攻撃されれば」との条件をつけ、「防御のための兵器」と強調している。北朝鮮の核兵器は、使えない兵器なのだ。
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