徴用工問題で“速度戦”に失敗した尹錫悦 アベ不在…それでもキシダは騙されるのか

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「謝罪」無くとも軍事協力は史上最強

 日米韓の軍事協力に関しては、長らく日本が消極的でした。朝鮮半島での紛争への「巻き込まれ」を恐れたからです。しかし、2002年に北朝鮮による拉致問題が表面化した後は、日本国内で対韓接近を阻んできた親北勢力の力が一気に弱まりました。

 しかし、その時には韓国に史上初の親北左派政権が登場していた。金大中(キム・デジュン)政権(1998―2003年)と、それに続く盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003年―2008年)です。3カ国の軍事協力などという空気は吹っ飛びました。

 10年ぶりの保守、李明博(イ・ミョンバク)政権(2008-2013年)は日本とGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を結ぶ意向を表明しましたが、中国の圧力で潰されました。政権末期は人気取りのための反日に明け暮れもしました。

 次の朴槿恵(パク・クネ)政権(2013-2017年)は保守ですが親中離米。前政権下で中国の意向を受け、日韓GSOMIAを潰したのも与党の代表を務めていた朴槿恵氏でした。

 もっとも2016年11月、退陣を要求する嵐が吹き荒れる中、朴槿恵政権は日韓GSOMIAを結びました。保守陣営の結束を固め、米国の支持を得るためでしたが、翌2017年3月に政権は崩壊。3カ国の軍事協力は本格化しませんでした。

 朴槿恵政権が倒された後に誕生した文在寅政権は強烈な反米親北派でした。日本はもちろん米国との軍事協力さえも嫌がりました。

 2019年7月に日本が対韓輸出規制の厳格化を打ち出すと、しめたとばかりに日韓GSOMIAの失効を宣言。結局、米国の圧力で同年11月、「失効の停止」を表明する羽目に陥りましたが、軍事情報交流は尹錫悦政権の登場まで絵に描いた餅になりました。

 結局、日本が譲歩しなくとも――政府が謝罪したり、企業がカネを払わなくとも、日米韓の軍事協力はすでに史上最強なのです。

韓国に譲歩したら米国に怒られる

――しかし、日米韓の軍事協力は対中国では機能していません。

鈴置:確かに機能していません。尹錫悦政権が打ち出したインド太平洋戦略で中国は敵としない姿勢を明確にしていて、3カ国の軍事協力は「対中」では動いていないのが現実です。

 J・バイデン(Joe Biden)政権が力を入れる半導体の中国封鎖網にも韓国は加わろうとしません(「どうする韓国、中国が怖くて半導体封鎖に加われないのか 『ホワイト国』に再指定すれば日本も同罪」参照)。

 でも、日米韓の対中包囲網ができないのは日本のせいではなく、韓国の「恐中心」が原因です。日本政府が植民地支配を謝罪すれば、あるいは日本企業がカネを出せば、韓国人に中国に立ち向かう気概が生まれる――わけではないのです。

 むしろ今、韓国に甘い顔をすれば「西側陣営に戻らなくても許される」と勘違いさせてしまいます。それは米国が――バイデン政権こそが一番、分かっている。今後、日本が米国に怒られるとしたら、「韓国に譲歩しないからではなく、韓国に譲歩するから」なのです。

バイデンのメンツを潰した韓国

 尹錫悦政権はスタートするや否や、「韓国に譲歩しないと日本は米国から怒られるぞ」と、執拗に宣伝してきました。日本の中にもそれに呼応する人が相次ぎました。しかし、時間が経つほどに、韓国が主張する「米国カード」の嘘もばれてきました。

「徴用工問題」が片付かなくても、米国は一向に怒って来ない。1月13日の日米首脳会談でもJ・バイデン大統領は岸田首相を叱りつけたりしませんでした。そもそも日韓関係は大した話題になりませんでした。バイデン政権の首脳部は大統領以下、韓国という国が平気で約束を破る国と知っているからです。

 2015年12月の安倍晋三政権と朴槿恵政権の慰安婦合意も当時、B・オバマ(Barack Obama)大統領の下で副大統領だったバイデン氏が保証人になりました。韓国の約束破りを見越した菅義偉官房長官(当時)のアイデアとされています。

 日本政府の予想通り、朴槿恵政権は自分が約束した在韓日本大使館前の「慰安婦像の撤去」を実行しなかった。次の文在寅政権に至っては慰安婦合意により作られた「和解・癒し財団」を解散し、合意そのものを破棄しました。

 米国のメンツは丸つぶれとなりました。「慰安婦」で裏切られたバイデン大統領が「徴用工」で日韓の間を取り持とう、という気にならないのは当然です。

 現在、国務長官のA・ブリンケン(Antony Blinken)氏はオバマ政権でバイデン副大統領の補佐官や、大統領副補佐官を務めました。いずれも国家安全保障担当です。現・国務副長官のW・シャーマン(Wendy Sherman)氏は当時、国務次官でした。

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