アメリカ軍の凄すぎる「気球撃墜大作戦」 炭疽菌を積んで飛ばされたら日本は一巻の終わり
難易度の高い作戦
「第2点は国際法の強引な解釈が可能だということです。民間航空機の国際的なルールを定めたシカゴ条約(国際民間航空条約)では、民間航空機を撃墜することは原則禁止と謳っています。中国は気球が民間のものだったと繰り返し主張し、アメリカを批判していますが、その理論的根拠をシカゴ条約に求めているのでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
そして第3点として「撃墜が極めて難しい」ことが挙げられる。
テレビのニュースでは、ミサイルが気球に命中し、人々が歓声を上げる様子が何度も映し出された。素人には「簡単に撃ち落とした」という印象が強いかもしれない。
「実はアメリカ軍にとって極めて難易度の高い作戦でした。そもそも高度2万メートルを飛べる戦闘機がありません。F22戦闘機が2機出撃し、高度1万8000メートルからミサイルを1発射って撃墜しました。高度はF22の行動限界に近く、この点だけでも容易な作戦ではなかったはずです」(同・軍事ジャーナリスト)
気球が何を搭載しているのか分からないという点も、アメリカ軍は憂慮しただろう。撃墜した気球から有害な物質が領海に飛散するようなことがあっては目も当てられない。
徹底した偵察
そこでアメリカ軍はまず、U2偵察機を投入した。1955年に導入されたU2は、冷戦期に東側諸国の偵察で大活躍したというエピソードから、“遺物”という印象を持つ人も多いだろう。
「U2は高度2万メートル以上を飛ぶことができます。アメリカ軍の軍用機の中では最高度を誇り、それが今も現役で活躍している理由です。今回の作戦では気球に接近し、領海上で撃墜しても問題が生じないか、写真撮影など極めて丁寧な調査を実施したと考えられます」(同・軍事ジャーナリスト)
さらにアメリカ軍はRC135偵察機も飛ばした。こちらは大型の機体で、電子偵察を得意とする。気球がどんな情報を集めているのか分析したと考えられている。
「空中でU2とRC135が綿密な調査を行い、『気球は間違いなく軍事用の偵察兵器であり、気象用ではない』ことを確認したのでしょう。この結果、『第三国の兵器が領空を侵犯したため撃墜した』という国際法上の根拠を固めたわけです」(同・軍事ジャーナリスト)
次に問題になったのが撃墜するミサイルだ。気球にはエンジンが搭載されていないので、熱源を感知する赤外線誘導ミサイルは役に立たない。ステルス性も高く、レーダーで誘導するミサイルも意味がない。
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