別々の家庭で育った双子の人生が「驚きの一致」 遺伝子はどこまで人生を左右するか
近年、「親ガチャ」という言葉が若者の間で語られるようになった。確かにどの親から生まれるかによってその人の人生は大きく変わる。
しかし、子どもが親から譲り受けるものは何も家庭環境や価値観だけではない。
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確実に受け継ぐのは「遺伝子」である。
遺伝子は、外見、知能、運動能力、体質から趣味や趣向といったところまで多大な影響を与える。
難しいのは、何をどのくらい受け継ぐか決まっていないという点だろうか。美男美女からさらなる美男美女が生まれるとは限らない。大政治家、名経営者の2世がボンクラだったなんてことも珍しい話ではない。
果たして、遺伝子はどのくらいその人の人生に影響を与えるのか。別の言い方をすれば、環境と遺伝はどちらが「強い」のか。
デンマークの若き分子生物学者、ニコラス・ブレンボー氏の著書『寿命ハック―死なない細胞、老いない身体―』には、「双子の研究」をもとにした興味深い説が述べられている。私たちはどの程度遺伝子から影響を受けているのか、のぞいてみよう。(以下、同書より抜粋して引用)【前後編の前編】
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遺伝子が持つ情報
遺伝か環境かについての研究で最もよく用いられる手法は双子の研究である。科学者たちは自然の恩恵、すなわち一卵性双生児のDNAはすべて同じという事実を活用する。一卵性双生児は遺伝的なクローンのようなものだ。卵子と精子が受精すると、通常その受精卵は成長してひとりの人間になる。しかし、細胞分裂の初期に受精卵が二つに分かれることがある。そうなるとひとりではなく、同じ遺伝子の設計図をもとに作られたふたりの人間になる。
一方、二卵性双生児のDNAはまったく同じではない。彼らは別々の精子を受精した別々の卵子から生まれる。したがってDNAの50パーセントしか共有せず、遺伝的な近さは通常のきょうだいと変わらない。
一卵性双生児と二卵性双生児のこの重要な違いを利用して、さまざまな特質に遺伝がどれほど影響しているかを調べることができる。似たような環境で育った一卵性と二卵性を比較し、ある特質に関して一卵性のほうが二卵性より互いとよく似ていれば、その特質には遺伝が強く関与していると考えられる。
遺伝と環境、人生を左右するのはどちら?
双子研究の中でも特に興味を惹かれるのはミネソタ双子研究だ。この研究では、異なる家族の養子になり、別々の環境で成長した一卵性双生児と二卵性双生児を追跡調査した。
研究者は、一卵性双生児でも育った環境が違うと多くの面で異なるだろう、と予想していたが、驚くべきことに、双子たちはとてもよく似ていた。互いと一度も会ったことがないのに、一緒に育ったように見えるのだ。
研究者のひとりであるナンシー・セガールは、ジェームズ・ルイスとジム・スプリンガーという一卵性双生児をその例として挙げる。
このふたりが初めて会ったのは40歳頃だったが、それまでの人生は奇妙なほどよく似ていた。どちらも毎年フロリダの同じビーチで休暇を過ごし、爪を噛む癖があり、水色のシボレーを運転し、似たような頭痛に悩まされていた。
どちらも非常勤の保安官で、マクドナルドでアルバイトをしていた。一方は息子をジェームズ・アラン(James Alan)と名づけ、もう一方も息子をジェームズ・アラン(James Allan)と名づけた。さらに、思いがけないことに、どちらもリンダという女性と最初に結婚し、後に別れてベティーという女性と再婚した。その後、一方はベティーとも離婚したので、おそらくもうひとりのベティーは心配していることだろう。
当然ながら妻の名前は遺伝子にコードされているわけではない。しかしこの双子の物語は、遺伝子が人の特徴にどれほど影響し得るかを語っている。
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かなり極端なケースなのだろうが、まったく別々の環境で育ったにもかかわらず、癖、職業、女性の好み(?)まで一致していたというのだから遺伝子の影響力はすさまじい。
【後編:双子は寿命もソックリなのか? 判明した「寿命」遺伝率の意外な真実】では遺伝と寿命の関係について見ていこう。