中国の高齢者はコロナ政策の失敗に大激怒 今後も“群体制事件”が多発する可能性
「政府は庶民の医療保険の金に手を出すな」
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中国湖北省武漢市で2月15日、医療手当の削減に反対する高齢者の大規模デモが行われた。1万人規模の高齢者が病院や公園などに集結し、革命歌「インターナショナル」を合唱した。警戒に当たる警察官との間で小競り合いも生じた。
毎月260元(約5000円)程度支給されていた医薬品購入の際の補助が、2月から約80元に減額されたことがそもそもの原因だ。
武漢市では2月8日にも1万人規模の高齢者が市政府庁舎前に集まり、傘を差したまま入り口をふさぐ事態となっていた。
その様子はネット上で「怒りの傘デモ」として広く拡散していたが、武漢市当局が要求を拒絶したことから、彼らは再びデモを実施するという異例の展開となった。
デモ参加者は、武漢製鉄を始め他の国営企業を退職した高齢者だった。彼らは1998年から医薬品購入補助金を受け取っており、その数は200万人に上ると言われている。
遼寧省大連市でも2月15日、保険制度の変更に抗議するデモが起きた。市政府庁舎前に集まった高齢者が市長の名前を叫ぶ動画が拡散しており、医療費の負担増に対する高齢者の不満が中国全土で広がりを見せている。
中国では男性60歳、女性50~55歳が法律上の定年年齢だ。中国政府が進めている医療保険制度改革は3億5000万人に悪影響をもたらす可能性がある。
中国で大規模デモが報じられたのは、ゼロコロナ政策に反対する抗議活動「白紙デモ」が全国に波及した昨年11月下旬以来のことだ。
若者が主導する抗議デモが「燎原の火」のごとく広がったことに危機感を覚えた政府は、ゼロコロナ政策を突如終了するという予想外の決定を下した。
だが、この方針転換はあまりに拙速だった。
地方では深刻被害
中国政府は昨年12月、その後の感染急拡大への備えをほとんどしないまま、ゼロコロナ政策の厳しい制限措置を解除したからだ。
ゼロコロナ政策を正当化する理由として、高齢者を守る必要性に度々言及していたのにもかかわらず、である。
3年にわたって新型コロナを抑え込んでいた一方で、その間に2億人以上の高齢者を守る準備をしてこなかったことから、案の定、中国では昨年12月中旬から高齢者の死者が急増している。
沿岸の大都市では新型コロナの集団発生により高齢者施設での大量死が相次いでおり、「なぜ事前にもっと対応をとらなかったのか」と政府への不満が高まっている。
地方では沿岸の大都市以上に深刻な状態となっているのは言うまでもない。
高齢化が沿岸の大都市に比べはるかに進んでおり、高齢者の8割以上が基礎疾患を持っている。新型コロナに対して極めて脆弱な状態にある。
さらに、医療体制が都市部に比べて貧弱だ。地方の医療体制の拡充が計画されていたが、コロナ禍の3年間でむしろその能力は低下してしまった。医療従事者のレベルも極めて低いと言われている。
新型コロナのパンデミックの震源地となった武漢市では2020年に比べ、現在の方が高齢者の死者数が多いとも言われている。
医療資源が乏しい地方の高齢者は、新型コロナから身を守るためには医薬品に頼るしかないのが現状だが、医薬品の補助が80元ではまともな風邪薬すら買えなくなる。
地方政府はこのような状況を十分認識しているが、ない袖は振れない。
不動産市場の低迷で経済成長が鈍化する一方、3年間続いたゼロコロナ政策のせいで地方財政が極度に悪化しているからだ。
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