甲子園の「私立独占」を許すな! 存在感を示す公立高校の“逆襲”

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強豪の私立校で進む“プロ化”

 3月18日に開幕する第95回選抜高校野球大会。2度目の大会連覇を狙う大阪桐蔭(大阪)、前哨戦といえる明治神宮大会の決勝で同校と接戦を演じた広陵(広島)、昨年夏の甲子園優勝メンバーが多く残る仙台育英(宮城)が優勝候補の中心と見られている。他にも上位進出が有力視されているチームは、いずれも“私立高校”である。【西尾典文/野球ライター】

 筆者が、デイリー新潮に寄稿した「高校野球『強豪校』の寡占化がさらに…“格差是正”には、『甲子園大会』の見直しも必要か」という記事(1月27日配信)でも触れたが、現在の甲子園で勝ち上がるには、有望選手の積極的なスカウティングや、専門知識を持つコーチ、トレーナーらの指導は必要不可欠であり、そのような体制を整えられるのは、やはり一部の私立高校となる。

 近年の「春夏の甲子園優勝校」を見ても私立が並んでいる。2000年以降に甲子園優勝を達成した公立高校は、佐賀北(佐賀・07年夏)と清峰(長崎・09年春)の2校のみと寂しい。強豪の私立高校の“プロ化”が進んでいることからも、この流れは続いていきそうだ。

名門校の鮮やかな復活

 だが、これに対抗しようと、善戦している公立校があることも事実だ。その筆頭が高松商(香川)である。春夏それぞれ2回の甲子園優勝を誇る名門校は、1996年を最後に甲子園出場から遠ざかっていた。

 それが一転、中学野球で実績がある長尾健司監督が2014年、監督に就任すると鮮やかに復活した。翌年、秋の明治神宮大会で優勝を果たすと、16年の選抜では準優勝に輝く。19年は選抜と夏の甲子園、21年と22年の夏の甲子園にも出場している。

 また、高松商といえば、昨年は浅野翔吾がドラフト1位で巨人に入団したことでも話題となった。投手は、吉田輝星(金足農→日本ハム)や佐々木朗希(大船渡→ロッテ)のように、公立高校からでも高い評価でプロ入りしている例は少なくないが、野手でここまで“ドラフトの目玉”になる選手が出てくることは非常に珍しい。チームが全国大会で勝つだけでなく、ドラフト1位でプロ入りするような選手が出てきたことで、さらに“チームの格”が上がった印象を受ける。

高松商が全国大会で勝ち進んだ理由は強力打線だ。準優勝した16年の選抜は、決勝こそ智弁学園のエース、村上頌樹(現・阪神)に1点に抑え込まれたが、5試合で34点を記録している。

 昨年夏の甲子園では、初戦の佐久長聖戦で14点を奪い、準々決勝の近江戦も一点差で敗れたとはいえ、相手のエース、山田陽翔(西武5位)から6点を奪っている。高松商は古くからの伝統校で、地元の有力選手が集まりやすい環境にあることに加えて、打撃指導がしっかりしている証拠と言えるだろう。

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