侍ジャパン・栗山監督が持つ“不思議な力”とは 2度野球から逃げた過去が(小林信也)

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自身も二刀流

 栗山の選手としての才能にも目を向けよう。「格下だ」と認めつつ、心の奥に強い自負を秘めている。そう思わせる一面がある。中学で野球を始めてからずっと傑出した力を発揮し、エース兼主力打者であり続けた。

 東京新大学ファンのHPに興味深い紹介がある。投手として1年春、2年春の優勝に貢献。右肘を痛め、打者に転向するまで25勝8敗。打者としてはリーグ史上3位の打率.389。1982年春の20打点は昨秋までリーグ記録。何と、栗山自身が二刀流の体現者だった。

「自称天才、凡才に化し」と表現した自負がのぞく。凡才のふりをしながら、非凡さをその謙虚さの奥に隠し続けている栗山の恐ろしさ。

 WBCでは、一発勝負の采配に栗山が新たなきらめきを発揮するのか。それとも、最強と呼び声の高い選手個々に任せ、才気あふれる野球を演出するのか。親しい知人が「栗さんは国立大出身で初の監督という経歴に誇りを秘めている」という。栗山にとっても絶対に負けられない戦いが目の前にある。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2023年2月16日号掲載

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