ソフトバンク、史上空前の“大型補強”も、他球団の編成担当者は「圧倒的な戦力という感じはしない」

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「優勝して当然」のプレッシャー

 内川、松田とともに打線を牽引していた、デスパイネとグラシアルもオフに退団。ともに2年目となる野村勇や正木智也ら楽しみな選手がいるが、確かに中心となる野手は、左打者ばかりだ。一方、捕手に関しても海野隆司や渡辺陸といった伸び盛りの選手がいる。だが、嶺井の加入によって彼らの出場機会を奪い、成長に蓋をしてしまう可能性は否定できない。

 ソフトバンクにとって意外な敵になりそうなのが『大型補強をしたのだから優勝して当然』という周囲からのプレッシャーであるが、“大型補強”と言われる割に、実は「単年ベースの総年俸」はそこまで上がっていないという。

「新加入の選手たちは、確かに“高給取り”が揃っていますが、外国人選手まで含めた総年俸はそこまで上がっていないそうです。理由としては、千賀滉大や松田宣浩、デスパイネ、グラシアルといった高額年俸の選手が退団したからです。昨年はチャットウッド(7月に退団)、ガルビスという大物メジャーリーガーを獲得していますが、(オスナとガンケル以外の)今季からチームに加わる外国人選手は、比較的地味な印象で、青天井でお金を出し続けているのではなく、コストのコントロールはしています。ただ、新加入する選手が、複数年の大型契約を結ぶケースが多く、資金が青天井で補強している印象がどうしても強くなる。そうなると周りからは勝って当然という空気になりますけど、実際にかけているコストはそこまだ増えていないわけですから、藤本博史監督や現場の首脳陣は必要以上にプレッシャーを感じますよね……。去年、最終戦で優勝を逃しているだけに、余計に重圧は大きいと思います」(前出の編成担当者)

「常勝軍団」の復活なるか

 春季キャンプイン前には、藤本監督からは「フロントには最高の補強をしてもらった」、王貞治会長からも「今年は(2位のチームを)10ゲームくらい離すんだという強い気持ちを持って戦いたい」というコメントが出ているが、この言葉からも相当な重圧がかかっていることがうかがえる。

 ただ、前述の通り、総年俸はそこまで上がったわけではなく、またチームの弱点を的確に補っているわけでもない。藤本監督ら現場の責任者にとっては“大型補強”もありがたいことばかりではないと言えそうだ。

 2011年からの10年間で7度の日本一に輝いた常勝軍団も、過去2年の戦いぶりを見ていると大きな転換期を迎えている。大きな重圧の中で、藤本監督が再びチームを上昇気流に乗せることができるのか。その道は平坦なものではなさそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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