「デ・ニーロものまね芸人」、地方移住で見つけた「貯金残高30万円」でも幸せな生活

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ブレイクしたほぼ同世代の錦鯉をどう思う? そして、貯金残高は?

 最後に聞きにくいことをいくつか聞いた。

 相方とのケンカ別れや、仕事がない状態も経験した中、芸人を辞めようとは思わなかったのか?

「芸人って、卒業式とか引退式がないじゃないですか。それに昔から言われていることがあるんですよ。“売れるには辞めないこと”って。ネタをやらなくても、レポーターとかできるし、辞める必要もないなと」

 最近になってブレイクした、年が近い錦鯉をどう見ていたか。

「いやあ、頑張ってんなって。なんか嬉しかったですね。錦鯉はまさに、辞めなくて売れた芸人ですね」

 テルが21年まで務めた「佐野市地域おこし協力隊員」の報酬は、総務省によれば19年度までは一人当たり、報償費等が年200万円、活動経費が200万円と、年間400万円を上限として国から支給された。報償費については、20年度は「上限240万円」、21年度は「上限270万円」と段階的に引き上げられている。

 そのまま佐野市に止まって活動している現在の収入源は?

「地元のケーブルテレビ局の番組に毎週出演しているのと、隣の小山市のTBC学院で、12月までは週に一回イラストを教えていました。4月からまた授業があるのかは、まだわかりません」

 協力隊員の時と比べて年収はどう?

「全然少ないっす。貯金を切り崩して、もうちょっとで無くなるぐらいです。残高? ほんと、無いですよ。30万円ぐらいです」

東京に戻る気はナシ?

 現在の状況をどう思っている?

「めっちゃ幸せですね。普段は一般の方と仲良くしゃべってメシ食べたりしています。芸人と一緒にいると、しゃべったらこうボケて、こう返して、またこう被せて、をずっと考えて気が休まらないんですが、今はそれがない。こっちではボケてもツッコミがいない。だから自分で処理しなきゃいけない。結果的に一人でやる技術は上がってきました。あっ……、結局、芸人として考えているか(笑)。あと、佐野は優しい人ばかり。グイグイ入り込んで来るしんどい人もいません。ゴルフ場は近いし、食料品が東京と比べ物にならないぐらい安く買えるスーパーはあるし、本当に住みやすいです」

 芸人の第一線に戻る気は?

「この前、久々に芸人としゃべったら、すごく楽しかったんですよ。これこれ!忘れてたヤツ!と思ったんですが、そっちに積極的に戻ろうとはあまり思わないです。僕らより下の世代にいい芸人がたくさんいて、ネタもかなわないですし」

 活躍する同世代芸人を見てライバル心が刺激されることは?

「僕はハングリーとか、そういう言葉とは無縁というか、あんまりそういう感情は出して来なかったんです。今もそうです。ま、それでケンキに怒られてたんですが(笑)。“やる気がねー!”って(笑)」

 元々穏やかな性格のテルは、佐野市に来てから心地良い日々を過ごせているという。

「自然体で生活できていて、このままこの町に骨を埋めてもいいかなとも思ってます。仕事が全く無くなって、そのタイミングで他からいいオファーがあれば、そっちに行くしか無いでしょうが。今まで、なんとかなるよと思いながら生きてきて、実際になんとかなっちゃってた。これからもなんとかなるんじゃないですか」

 テルは佐野市で、幸せな生き方を見つけていた。

(後編では元相方のケンキが登場)

華川富士也(かがわ・ふじや)
ライター、構成作家、フォトグラファー。1970年生まれ。長く勤めた新聞社を退社し1年間子育てに専念。2022年からフリーで活動。アイドル、洋楽、邦楽、建築、旅、町ネタ、昭和ネタなどを得意とする。過去にはシリーズ累計200万部以上売れた大ヒット書籍に立ち上げから関わりライターも務めた。

デイリー新潮編集部

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