日本郵便と製造業の不二越が最低評価…賃上げ実現のために政府がやるべきこと

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「日本は低賃金国だ」との認識が国内外で広まっている。

 日本の賃金は20年以上にわたって停滞してきた。その結果、日本の賃金は、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国の中で24位と落ち込んでいる。

 デフレ下で実質賃金がプラスになったせいで、日本では賃上げへの取り組みが他国に比べ活発でなかったことが災いした形だ。

 だが、昨年12月の消費者物価指数(CPI)が前年比4%増と41年ぶりのインフレになるなど、足元の環境は大きく変化しつつある。

 2月7日に発表された昨年の毎月勤労統計調査によれば、物価の影響を考慮した実質賃金は前年比0.9%の減少だった。賃金の実質水準を算出する指標となる物価が3.0%増と賃金の伸びを上回る状況となっている。

 こうした中、春の労使交渉が2月から本格的に始まっている。

進まない「中小企業の賃上げ」

 今年は、例年とは異なり賃上げについて好意的な論調が支配的になっているが、その先鞭を付けたのが経団連だった。

 経団連は1月中旬、今年の春季労使交渉に向けた経営陣の基本スタンスを示す「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」を公表し、賃上げの検討を企業に促した。

 経労委は報告書の中で「『生産性が低いから賃金を上げられない』というこれまでの姿勢を改め、『賃金のベースを引き上げることで生産性を高めるインセンティブにする』という発想の転換をすべきだ」と提言している。

 思い切った賃上げで優秀な人材を確保し、商品やサービスの質を高めるという、賃上げを起点にした成長戦略を策定することを企業に求めていることが話題となっているが、筆者が注目したのは「賃上げは『企業の社会的な責務』だ」と位置づけ、「中小企業の賃上げには適切な価格転嫁が不可欠だ」と強調している点だ。

 賃上げの機運が高まっているものの、中小企業の賃上げの状況は相変わらず芳しくない。

 全国の中小企業約2300社を対象に商工組合中央公庫が昨年11~12月に実施した調査によれば、今年の賃上げ率は1.98%になる見込みであり、昨年の実績(1.95%)とほぼ同じだ。

 中小企業の賃上げ率が伸び悩む主な要因は価格転嫁が進んでいないことにある。

 日本商工会議所の昨年11月の調査によれば、企業の9割が「価格転嫁できていない」又は「一部できていない」と回答している。中小企業が大企業以上に原材料コストの高騰に苦しんでいるのにもかかわらず、である。

 日本の雇用の7割を担う中小企業の賃上げ率は、安倍政権の下で「官製春闘」が始まった2014年以降で見ても、大企業を下回って推移している。

 賃上げによるデフレ脱却が期待されているが、中小企業が賃上げできる環境を整備しなければ、「絵に描いた餅」に終わってしまうだろう。

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