ロシア軍の“信じがたいミス”がまた発覚…最新兵器「Tor-M2DT」がウクライナ軍に破壊されたウラ事情

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“ターミネーター”の末路

 士気が上がったのは、むしろウクライナ軍だ。ズベズダの報道などでTor-M2DTの投入を知り、周到に準備しながら待ち構えていた。そして何が起きたのか──Forbesの記事から紹介しよう。

《ウクライナ軍第406砲兵旅団の保有するドローン群がヘルソン州でTor-M2DTの位置を突き止めた。報道によると、砲手はGPS誘導エクスカリバー弾を発射して、1月下旬から2月初旬にかけてのわずか数日の間に2台のTorを破壊した》

 ウクライナ軍はTor-M2DTが爆発・炎上する様子をドローンで撮影、動画をTwitterなどで公開した。これは今でも視聴が可能だ。

 ロシア軍が自軍の動きを不用意に広報し、多大な損失を被ったのは、これが初めてではない。

「BMP-Tという戦車支援車両は、ロシア軍自慢の兵器です。戦車は小回りがきかないので、歩兵の攻撃に弱い。そのために開発されたBMP-Tは、戦車を護衛し、敵の歩兵を攻撃します。“ターミネーター”というあだ名が付けられ、『攻撃力も防御力も非常に高い』と宣伝してきました。ウクライナ戦争にはT−72戦車の車体を流用したBMPT−72が投入されています」(同・軍事ジャーナリスト)

 昨年の5月18日、ロシア国営のRIAノーボスチ通信は「ウクライナ東部にBMPT−72を投入する」と報じた。

「報道を把握したウクライナ軍は“ターミネーター”を待ち構えていました。そして今月10日、ウクライナ国防省はTwitterにBMPT−72が爆発する動画を公開しました。発表によると、東部のクレミンナ近くで撃破したそうです。映画『ターミネーター』には“I'll be back(俺は戻ってくる)”という有名なセリフがあります。それをもじって“It won’t be back(元には戻らない)”という一文をツイートに記しました」(同・軍事ジャーナリスト)

大晦日の惨事

 専門家が首をひねるのは、ロシア軍の学習能力がゼロだということだ。デイリー新潮は1月10日、「HIMARSでロシア軍の徴集兵400人死亡 背景に『兵士のパーティー情報漏れ』というお粗末」との記事を配信した。

「大晦日から元日にかけて、ウクライナ東部に駐留していたロシア軍部隊が新年のパーティーを開きました。ところが、SNS上でパーティーの予定を投稿していたため、ウクライナ軍は高機動ロケット砲システム『ハイマース(HIMARS)』で攻撃、多数の戦死者が出たのです。他にも、地対空ミサイルの配備位置が不用意なSNSの投稿で特定されたこともありました。同じミスを何度も犯しているのに、ロシア軍は機密保持を徹底させることができないのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 昨年、「ロシア軍の弾薬庫が爆発」というニュースが何度も伝えられたが、今は減少傾向にある。

「弾薬庫に関しては、ロシア軍は学習しています。HIMARSや榴弾砲の射程を考慮し、兵站を前線から下げたと考えられます。にもかかわらず、Tor-M2DTやBMPT−72の投入はメディアで発表し、ウクライナ軍にマークされるという信じがたいミスを犯しました。ロシア軍の上層部には無能な軍人がおり、何も考えずに情報を垂れ流しているのか、と疑いたくなります」(同・軍事ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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