自衛隊で異例の「上司へのパワハラ」が! 5人の“メンタル破壊”で免職処分に
「ばかじゃないの」
ここに本誌(「週刊新潮」)が入手したこの事件についての〈懲戒処分説明書〉がある。昨年12月21日に海自の横須賀地方総監の名義で作成されたものだが、そこに記された〈違反事実〉を見ると、上司と部下の恐るべきやり取りの仔細が記録されていた。
たとえば、上官などに対する〈反抗不服従〉だと認定されたケースはこんな具合だ(編集部注=被害者の氏名はアルファベットに書き換え)。
〈(上位者であるA1等海曹に対し)日常的に「あんた」と呼ぶとともに、「作業にあんた行きなさいよ」「ばかじゃないの」と暴言を吐いた〉
〈(上位者であるB曹長に対し)「黙ってろ」「黙って言われたことだけやっとけばいいんだよ」等の暴言を4回吐いた〉
〈上司である就職援護室長C3等海佐(中略)に対し、「仕事をするつもりがないなら運用班に帰れば」との暴言を吐いた〉
さらに暴言とは別にパワハラとして指摘されているのは、以下の通りだ。
〈上司である就職援護室員D1等海尉に対し、(中略)「今の職場で仕事していく気あるの?前の職場も2日で逃げたんだから、厚木勤務にこだわらず自宅近辺の横須賀に帰りなよ」とのD1尉の病歴である「適応障害」を揶揄する等の人格を否定する発言によって精神的苦痛を与え、D1尉が精神疾患を発症する一因をなした〉
〈C3佐に対し、日常的に「資料が見づらい」「もっといい資料を作ってください」と非難するとともに、(中略)正当な理由なく「間違っている」と非難して精神的苦痛を与え、C3佐が精神疾患を発症する一因をなした〉
これら列挙しただけでも、一体どちらが上司か分からない。昨今の民間企業ならば“一発アウト”の事例が並ぶが、くり返すまでもなく全てが自衛隊という軍事組織で起こったことだ。
「お前馬鹿なんだよ」
最終的に彼女を「懲戒免職」とした海自は、
〈本件行為は、階級による指揮統率によって部隊行動を行う自衛隊の秩序を著しく破壊する行為であり、部隊における規律維持への影響の大きさは計り知れない〉
と、組織に与えた衝撃の大きさについて触れた上で、
〈上司等4名に対し、勤務経験による優位性を背景に、業務の進め方に対する指摘や人格を否定する発言を繰り返す等して精神的苦痛を与え、当該4名が精神疾患を発症する一因をなしている〉
と認定したのである。
さらに、処分理由について海自はこうも書く。
〈過去にも複数の上官に対し「お前馬鹿なんだよ」等の暴言を吐いた上、うち2名に対し有形力の行使を伴う反抗を行い、傷害を負わせたとして、「停職21日」(H29・7・14)の処分を受けている。何ら反省することなく同様の非違行為を繰り返していることを合わせ鑑みれば(中略)「免職」が妥当する〉
「上司への“逆パワハラ”でクビになった元女性自衛隊員の告白 『納得がいきません』」に続く
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