「ルフィはまだフィリピンに潜伏している」36人拘束時に“入管に100万ペソを積んで逃げた男”の行方
「イイコウスケ」氏は何者か
NBIや入管の一連の発表によると、国際手配によってフィリピンで摘発された日本人特殊詐欺グループはこの36人のほか、20年2月11日にマニラの南方のラグナ州ファミ町でNBIに逮捕された21~31歳の日本人の男8人、21年4月にマニラ・パラニャーケのホテルでNBIに逮捕された渡辺優樹容疑者と小島智信容疑者の計46人だ。
うち、日本送還が発表されているのは40人で、6人が所在未確認のままとなっている。渡辺容疑者逮捕の際、フィリピンの英字紙「マニラブレティン」は21年5月26日付で以下のように報じている。
〈NBIによると、(渡辺)ユウキは、サイトウトモノブ(サイトウは小島容疑者が使っていた偽名)とイイコウスケと名乗る他の2人の日本人とともに去る3月17日に逮捕された。サイトウとイイコウスケはパスポートと外国人登録証を提示できず、サイトウは強制退去命令を受けていた。両者とも入管に引き渡された。NBIはユウキについてインターポール(国際刑事警察機構)のブルーノーティスで国際手配された逃亡者だと述べた〉
「ブルーノーティス」とは「犯罪捜査に関連して、個人の身元、場所、活動に関する追加情報を収集する対象者」で、逮捕を要請する「レッドノーティス」よりは緊急性が低い国際手配だ。問題はイイコウスケ氏のその後で、5月26日のNBIの発表にはその名がなく、釈放されたという。
観光ビザがあれば3カ月間滞在が可能
フィリピンの邦字紙「日刊まにら新聞」の竹下友章記者は次のように話す。
「イイコウスケ氏は渡辺らの仲間だったように思われますが、その後に滞在期限が有効なパスポートを提示できたため釈放されました。日本側の出入国記録ですぐ確認できるはずですが、現在もフィリピンに残っている可能性もあるでしょう」
その場合、どのようなビザで滞在していると考えられるのか。
「フィリピンはノービザで30日間滞在ができ、入管で観光ビザを申請すればさらに59日間滞在できます。その後もいちばん近い外国であるコタキナバル(マレーシア・ボルネオ島)などに出国して1泊2日で戻れば、また同じ手続きで3カ月の滞在が可能です。フィリピン人と結婚した場合は年単位でビザが出ます」(同)
その一方、企業などで働く日本人が就労ビザを取得する手続きは非常にやっかいだが、「ルフィ」たちがやっていたことは犯罪。逆に就労ビザは不要となる。
アジア各国のビザ事情に詳しい旅行作家・下川裕治氏が指摘する。
「タイの場合、観光目的で滞在し続けられるのは75日まで。その後、出国してすぐ再入国すると、滞在が許される日数が75日より短くなる場合が多い。アジア各国が観光ビザ延長の手続きを厳しくしつつある中、入国するごとに3カ月は滞在できるフィリピンは出入国管理全般が緩いという印象がある。長期旅行者にとってはありがたいことですが」
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