選抜高校野球「21世紀枠」はもう時代遅れ? 関係者は「推薦校探し」に四苦八苦
“公立高校のためにある制度”
ちなみに、これまで「21世紀枠」に選ばれたチームは64校(※選抜中止になった20年と今年を含む)。そのうち、私立高校は土佐(高知)のみで、それ以外は公立高校だ。今年の最終候補に残った9校に絞ってみると、私立高校は稚内大谷(北海道)だけだった。もはや「21世紀枠」は、“公立高校のためにある制度”と言っても過言ではないだろう。
もうひとつ議論になることが多いのが「選考方法」だ。選考委員会では最終選考に残った9校の都道府県高野連の理事長や専務理事らが、推薦した理由をプレゼンテーションして、それをもとに選考委員が話し合って決めるという形式となっている。結果的に、このプレゼンテーションが与える印象が、選考結果を大きく左右してしまう。
例えば、岩手(最終選考3回中3回選出)、福島(最終選考5回中4回選出)、兵庫(最終選考4回中3回選出)、徳島(最終選考7回中4回選出)などは、かなり“高い勝率”をたたき出している。だが一方で、三重(最終選考9回で選出なし)、鳥取(最終選考5回で選出なし)、広島(最終選考5回で選出なし)などは、何度も最終選考に残りながら、1度も「21世紀枠」に選出されていない。
“同じ土俵”で戦うべきか
ある県の高野連理事からは「最終選考に残ると、プレゼンテーションが相当な重荷で、周囲の関係者もかなり気を遣います」という話が聞こえてくる。各都道府県高野連の理事長や専務理事らが、普段から接していない推薦校の魅力をどう伝えるかによって、高校球児が目標とする大会出場が左右されるという事実は、高野連側もチームや選手側も“納得感”が薄いのではないだろうか。
そして、「21世紀枠」が抱える最大の疑問点は、主に試合内容で選ばれた「一般選抜枠」のチームと、野球とは異なる取り組みによって選ばれた「21世紀枠」のチームが“同じ土俵”で戦うことだ。
もちろん、08年に「21世紀枠」で選抜に出場した成章で、エースだった小川泰弘(現・ヤクルト)のように、その後の野球人生が開けた選手もいることから、大舞台のチャンスを与えることは理解できる。
それであれば、『近年の試合成績が良好ながら、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない』という基準に照らし合わせて、あと一歩のところで、「一般選考枠」での出場を逃したチームから “ワイルドカード”という形で、抽選によって追加出場校を決める方法でも、担保できるはずだ。
また、どうしても“野球以外”の取り組みを評価する枠を残すのであれば、監督や選手自身にプレゼンテーションしてもらい、それをもとに出場校を決めたうえで、この枠で選ばれたチームのみで、選抜とは別に「1試合限定の交流試合」を甲子園で実施しても良いのではないだろうか。
筆者が、こうした話を複数の現役指導者に提案したところ、反対する声は全く聞かれなかった。
「選抜高校野球」はあくまでも主催者によって“選抜”されたチームによるものという声も多いが、強豪校と、そうではない学校の差が年々大きくなっていることを考えると、現在の「21世紀枠」の選出方法では、無理が生じてきていることは明らかである。21世紀になってすでに20年以上が経過した。制度そのものを抜本的に見直す時期に来ていることは間違いない。
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