妻しか女性を知らなかったけれど…不倫してみたら「沼しかなかった」 小心者の40歳夫がメンタルを病んだ原因
そして雅斗さんも…
3年前、コロナ禍の始まったころ、職場も街も沈鬱な雰囲気に包まれていたあのころだ。雅斗さんは、生まれて始めて恋をした。佳恵さんとの関係は「恋」で始まったわけではなかったと彼は気づいた。今回こそが恋だと。
「相手は佳恵の友だちです。まだ緊急事態宣言が出る前だったんですが、飲食店に人が行かなくなっているという話があり、職場の同僚と行きつけの飲み屋に顔を出してみたんです。そこで女性に話しかけられた。『佳恵のダンナさんですよね』と。僕らは友人知人を呼んで簡単な結婚パーティをしたんですが、そのとき来てくれた佳恵の友人・紅美子でした。彼女は『佳恵とうまくいってます?』と意味ありげに尋ねてきました。『佳恵は奔放だから』とも。知っていますから大丈夫ですよと、ちょっと素っ気なく言ったら、『私、かつて佳恵の恋人と3人で同棲していたことがあるんです』と。さすがに驚きましたね。びっくりしている僕に紅美子は、やけになまめかしく笑って、キュッと抱きついて去っていったんです」
紅美子さんは去り際に彼のポケットに名刺を入れていった。そこにはプライベートな携帯番号が書いてある。悩んだ末、数日後に雅斗さんは紅美子さんに連絡をとって会った。紅美子さんも佳恵さんに負けず劣らず奔放そうだが、雅斗さんは無意識にそういう奔放な女性を欲していたのだろうか。
「理由はわかりませんが、ただ惹きつけられたというしかない。ここで彼女に連絡しなかったら一生後悔するような気がしていました。妻の友だちだから、多少は安心していたのかもしれない」
だが、そこには「沼」しかなかったと雅斗さんは言う。食事に行くとか会話を楽しむとか、そういうデートはほとんどなかった。雅斗さんは紅美子さんの家で、ひたすら性の奴隷と化したのだ。自分が好きでやっているのかどうかもわからなくなり、それでも彼女に会わずにはいられなかった。
「今思えば、あれが恋なのかどうかはわからない。でも理屈抜きで会わずにいられないのが恋だとしたら、まぎれもなく恋だと思う。情欲……? その可能性もありますね。ただ、恋がどういうものがわからなかったから、制御不能になった自分の気持ちが怖かった」
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