アダニ・ショックがインドに与える影響 モディ首相と大富豪の怪しい関係が白日の下に晒されるか

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アジアで最も低い労働参加率

 インドは成長著しいものの、雇用創出の速度が人口増加の速度に追いつけず、深刻な雇用問題に悩んでいる。

 インドの2021年の労働参加率(生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)に占める労働力人口の割合)は46%とアジアで最も低い水準だ(日本は84%)。

 雇用問題 の打撃を被っているのは総人口の半分を占める30歳未満の若年層だ。2021年の15歳から24歳までの失業率は28%とのデータがある。

 マッキンゼーグローバル研究所によれば、インドが現在の雇用問題を解決するためには年間8%超の経済成長率が不可欠だが、アダニ・ショックで今年の成長率は6%台を維持できるかどうかあやしくなっている。

 インド政府は2023年度の予算案で雇用創出効果が高いインフラ整備費を大幅に増加している(前年比33%増の10兆ルピー(約15兆5000億円))が、二人三脚でインフラ整備を進めてきたアダニとの関係が不調になれば、この野心的な雇用創出計画は「絵に描いた餅」になりかねない。

「若年層が雇用への不満を募らせれば募らせるほど政情が不安定化する」ことは過去の歴史が教えるところだ。インドの都市部では若年層の失業増加で治安が極端に悪化しつつある。

 モディ首相の支持率は今のところ高いが、雇用環境の悪化が深刻になれば、インドの政情が不安定化する可能性は排除できない。

 日本にとっても大きな存在になりつつあるインドだが、アダニ・ショックはブームに安易に流されることなく、等身大のインドに向き合うことの重要性を教えてくれているのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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